悪魔執事と黒い猫 夢小説

□第8夜
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どこを歩いても途切れることのない建物。この街は本当に賑わっている。

キョロキョロとするムーにアモンが注意する。



「ムー。あんまよそ見してると人にぶつかるっすよ!」


「あっ!あのお肉屋さん!美味しそうなお肉がたくさん!」


『あ…ムー、待って』




すっかりテンションが上がったムーには、そんな言葉も聞こえるはずもなく…別の方向から歩いた女性にぶつかってしまった。
そんなムーにほら見たことか…とため息をつくアモン。

その女性は黒装束を纏って、不思議な雰囲気を放った女性だ。




「ご、ごめんなさい!あの、お怪我はありませんか?」


「大丈夫ですよ…あなたの方こそ、お怪我はしておりませんか?」


「は、はい…僕は大丈夫だと思います」


「もし、身体に痛みが出たらこちらの薬を飲んでみてください」




女性はローブのポケットから小瓶を取り出して、ムーの肉球に持たせた。



「えっ!?わ、わざわざありがとうございます」


『うちの連れがご迷惑を…申し訳ございません』



そう言って軽く頭を下げると、彼女は「平気ですよ」と変わらない声色で答えた。




「ところでこちらの猫さん。あなたの使い魔なの?」


「えっ!?使い魔?」


「だって、猫なのに喋ってらっしゃるから…」




使い魔もいるんだ。悪魔との契約があるのだから、そういうものもあるのだろうと妙に納得してしまった。
たが、ムーはただの黒猫…と思われるもの。
女性はその答えに「不思議なこともあったものね」と呟くが…正直、彼女も不思議な存在だ。





「美しいご令嬢様。ムーくんがご迷惑をおかけして申し訳ありません」


「おや?あなたたちは、悪魔執事の方々…」


「はい。そうでございます」




悪魔執事のことを知っているみたいだが、すぐに分かるものなんだ。ナックが彼女の問いに答えると、彼女はその目を細めた。



「なるほど…それは辛い運命を背負いましたね」


(…?)


「いつになるか分かりませんが…その時が来たら、あなたが自分を乗り越えられればいいですね」


「自分を乗り越える?」




どういう意味なのか…それは言われたナックも分かっていないようだった。





「失礼ですが、美しいご令嬢様。それはどういう意味でしょうか?」


「それじゃあ…。あなたたちの未来に魔が近づきませんように…」



ナックの質問に答えることなく、彼女は人ゴミに紛れてしまった。




『…さっきのどういう意味?』


「うーん…。ちょっと理解が難しいですね」


「見た目も特徴的でしたね。上から下まで全身真っ黒でした」


『彼女も別の大地の人?』


「ええ…あの黒い衣装は北の大地の方ですね。街に来るなんて珍しい」




ナックが言うには、北の大地は雪に覆われ、気温が−20℃にもなる過酷な地域らしい。
彼女たちは魔女族と言う種族で謎に包まれた存在。4つの貴族のどれにも所属せず、過酷な北の大地に小さな街を作って暮らしている。昔から魔法が使えると言われているそうで、噂では若い女性しかいないという。

本当に謎な人たちだ。

そんな様々な大地について話していると、周りからの妙な視線に気づいた。
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