薄桜鬼 夢小説

□一話 沖
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古典以外の授業を受けて、放課後。




同じクラスの一君に連れ去られて、仕方なく剣道部に出た。





「「「キャアアアア!!!」」」






いつもどおり、道場の周りに集まった女の子たち。


特に僕と一君が見世物のようになっていて、何かするたびに女の子たちの甲高い声が道場内まで響き渡る。






「あーもう…なんとかなんねーのか?アレ…」





左之さんの声で休憩時間に入ったら、平助が僕のもとに来ながらぼやいた。






「うるさくて集中できねーよ」



「確かに、最近増えておるな」


「いや、僕に言われても、あの子たちが勝手にしてるだけで、僕のせいじゃないよ」


「いつも注意してくれる土方先生は遅いし…」


「土方先生は大事な会議があるそうだ」






マネージャーの千鶴ちゃんが用意してくれた飲み物とタオルを手にしたまま休憩時間を過ごす僕たち。


すると、そんな僕たちに悲鳴とは違う声が聞こえた。










「練習中に申し訳ありません。ちょっとお聞きしてもよろしいでしょうか?」










目に入ったのは、眩しいくらい綺麗な金髪に空のような蒼い瞳。

ハーフかな?


化粧で誤魔化していない…とにかく誰もが一度は二度見するかもしれないほどの本物の美女だった。


ああ…平助なんて顔が茹蛸のようになってるよ。お〜い、生きてる?






「その制服…桜華女学院の生徒だな」





休憩後の練習メニューを確認していた左之さんが話に入って来た。







「はい。桜華女学院2年の桜宮千夜と申します」





と、彼女はゆっくりと会釈した。


桜華女学院高校。
この県一の大きな女子校で、ここ薄桜学園と交友関係が深い学校…みたい。


なんで桜華の生徒がここに…とは誰も聞かない。
だって今日も集まる女の子たちの中に桜華の生徒がちらちらといるからだ。






「で、聞きたい事があるってのは、なんだ?」


「はい。実は人を捜しているのですが…」





彼女はおっとりとした口調で僕たちに訊いた。






「私と同じ、桜華の制服を着た、黒髪をおさげに結った女の子ですけど…身長はえっと…あ、彼女くらいの子です」





と、いい身長例だったのか、僕たちの近くにいた千鶴ちゃんを指した。

黒髪のおさげで桜華の子…そう言えば、今朝ぶつかったあの子も当てはまる子だな…


と、今朝出会った名前も知らない子の事をふと思い出した。……まさかね。






「こちらに顔を出したりとかは…」


「いや、悪いが見てないな」


「そうですか…」


「何か遭ったのか?」


「いえ、いつの間にかはぐれてしまっただけです」



どこに行ったのでしょうね、と頬に手をあてながらものほほんとする桜宮さん。





「ちょっと、いつまでいるのよ!」





そんな会話をしていたら、野次馬の中にいた一人の女生徒が声を上げた。




「沖田君たちが練習できないでしょ!用が済んだらさっさとそこ退いてくれる!?」






なんて勝手な事言っている女生徒。
平助が「お前らに言われてもな…」って僕の隣で言ってるけど、それ直接言ってあげたら?






「あら…随分賑やかな所だと思っていましたが…ここは剣道部の道場だったのですね。薄桜の剣道部はとても優秀の方々が多いと聞きますわ」




でも、意図的なのかそれとも本当に素でやっているのか…
桜宮さんは、女生徒を無視して壁に立てかけてある竹刀を見て彼女はのほほんと話しかける。

あの左之さんでも「あ、ああ…ありがとよ」と少々戸惑い気味だ。
うわ、一君まで目が点になってる。写メ撮れないのが残念だな。



っていうか、何も知らずにここに来たの?
ある意味スゴイな、彼女…。





一旦謎の空気が流れたかと思ったら、ハッと我に返ったその女生徒が眉間にしわを寄せて…





「ちょっと!無視してんじゃないよ!邪魔って言ってんの!」





と、彼女の肩を掴みながら怒鳴った。

その時…
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