HQ×黒子夢小説
□第1試合 おにぎりちゃんと出会い
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入学して数日が経った。みんなクラス内で友達が出来た頃。
ナズナの高校生活は特に変わったものはなく、平々凡々と送っていた。
千鶴と一緒に登校して、千鶴とお昼を食べて、
休み時間は本を読んで、部活に入っていないから放課後は宿題を終わらせて帰る。
そんな普通の生活。
今でもこれからもそう。何も変わらない。
しかし・・・。
『………。』
「………。」
梟谷学園高校1‐4、瑠璃咲ナズナ。
この出会いが、その考えに急カーブをもたらすものだった。
ある日の部活が始まる時間帯。
空手部に入部してすっかり馴染んだ幼馴染のもとへ部活前の間食として作ったおにぎりを届けようとした途中の事だった。
「………。」
『………。』
3つあるうちの一つの体育館前に立ち止まるナズナの目の前には屍のように地面とこんにちはしている人物。
顔は見えないけど、特徴的な髪型の男子生徒。
ジャージを着てるってことは、部活中か。
着てるジャージも新しくないため恐らく先輩。
そんな推測をしながら眺める。
ガバッ!
『………。』
その人が顔を上げ、目が合ったと思ったら…
「食い物の匂いいいいいいい!!」
『………。』
なんかゾンビのように地面を這って来た。
逃げる暇もなくナズナと距離を詰める。この間0.5秒…
内心驚きながらも特に反応を見せることなく、ナズナはじっとその人物を眺める。
さて、一体何ごとだろう?このひt――…
ぎゅるるるるる……
・・・・・。
お腹空いて倒れてたのですね…
盛大になるお腹の主の視線はナズナが持つ袋に釘付け。
袋の中身はこれから千鶴に渡すはずのおにぎり。
おにぎりってそんなに匂いするものなのだろうか。それも容器越しに。
嗅覚すごいだけなのだろうか…。
このまま知らない人物といる必要ない。
とりあえず…
『………おにぎりですけど…一つ食べます?』
「!!!」
おにぎりを渡すことにした。彼は目を輝かせた。
容器を開けどれがいいのか問う。
成長期なのか部活をしているせいなのか、千鶴はよく食べる。
足りないより余るくらいがいいだろうと大きいサイズのおにぎりを3つほど作って来ていた。
昆布か梅か味噌豚か。
どれも千鶴が好きな具のおにぎり。
一つ無くなっても怒らないだろう。
そのうちの一つをとったその人はその大きな口で一口おにぎりを食べる。
「うっめええええ!!」
どうやら味噌豚が当たったようだ。おめでとうございます。
スゴイ勢いでおにぎりを頬張る名も知らない先輩(と思われる生徒)。もう大丈夫そうだ
さて、餓死寸前もどきも生き返ったようだし、のこりを千鶴に渡しに行くためにその先輩に一礼。
後ろで何か言っていたが、無視させてもらった。
その後、なかなか来ないナズナを心配した千鶴が乱心していたから、おにぎりを渡して今日の晩御飯一緒に食べる約束をして…何とか治めてもらった。