HQ×黒子夢小説

□第2試合 おにぎりちゃんとチケット
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〜赤葦SIDE〜






男子バレー部に入部してもうすぐ1ヵ月が経つ。




入部して、憧れの木兎さんに目をつけられ、部活後の自主練に付き合っている間に、気に入られた…

(今日も自主練に付き合わされるだろうな…)





そんな事思いながらペンケースを忘れた教室へ向かう。







「お、赤葦。お疲れー、部活終わったのか?」



「いや、まだ。忘れ物取りに来た」











教室には数人の男子が固まっている。

同じクラスの奴もいるが隣のクラスの奴も一緒に談笑しているらしい。




もう学校には部活生以外ほとんど生徒がいない。




適当に話を交わして、机の中にある目的の物を抜く。










「しっかし、まさか受け取るなんて思わなかった」



「え!?じゃあ本当に来るのか?」



「は?いやいや…それは勘弁!罰ゲームはチケットを渡す事だろ?何で俺があんな地味子と出かけなきゃなんねーんだよ」



「うわ、じゃあ本当に来たらドタキャンするのか?サイッテー」



「じゃーさじゃあさ!今度は来るかどうか賭けてみねー?賭けに負けた奴はおごりな!」



「じゃあ、俺来るに一票!」



「俺は来ないに一票!」









どうやら女子の誰かをからかっている上に賭けているらしい。
最低な話だが、それを笑いながら聞いている彼らも同じだ。




これ以上は不愉快だから、さっさと教室を出ようとしたら教室の入り口に誰かの影が見えて、思わず顔を向けた。







『………。』







彼女は、瑠璃咲ナズナさん。
漫画でしかないと思っていたビン底メガネが特徴のクラスメイトだ。


他の女子みたいに騒ぐことがなく、独特なメガネのせいでよく見えない表情でただ本を読むか九条さんと一緒にいるか…




大人しいという印象。



忘れ物でもしたのだろうか、と思っていると、彼女は普通に歩いてさっきまでからかっていた奴らのもとへ来た。







『……コレ、返しに来た』






そう言った瑠璃咲さんの手にはチケットらしき紙切れ。
その言葉から、まさか…と思った。









『君の事知らないし、遊園地にも興味ないから』


「い、今の聞いて…た?」







ああ、やっぱり…

からかっていた本人たちの様子から、そのターゲットとなったのは彼女だと確信した。
ということは、今までの会話も聞いていたのだろう。

なんてタイミングの悪い…







「お、おい…やべぇぞ…確か瑠璃咲さんの幼馴染って九条だよな…?」



「ああ…空手部だった気が…」



「マジかよ…ッ」








こそこそと瑠璃咲さんの幼馴染である九条さんのことを話す張本人たち。
からかった瑠璃咲さんに謝る前に自分たちの身の危険を心配するとは…つくづく最低の奴らだ。







『なぜ?』






こそこそと話す奴らの声と別に、瑠璃咲さんの声が教室に響いた。







『何故千鶴の名前が出てくるの?千鶴は関係ないのでしょ?』







そう、いつもと変わらない表情で言う瑠璃咲さんは、なかなか受け取らないチケットを静かに近くの机に置いた。

何も言えない俺やからかっていた本人たちとは反対に、瑠璃咲さんは自分の机から電子辞書を取って、何事もなかったかのように教室を出て行った。








〜SIDE 終了〜
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