HQ×黒子夢小説
□第4試合 おにぎりちゃんとフクロウたち 出会う
2ページ/2ページ
大声で飛び出して行った木兎さん。
その数分後、再び現れた彼が抱えていた物に全員が固まった。
「連れて来たッス、キャプテン!!」
『………。』
何やってんだこの人は…
目眩がするのは俺だけではないはず。
なんたってこのミミズクヘッドは、自分より小さな女の子を米俵のように担ぎ、満面の笑みを浮かべているのだから。
頭を抱える主将を始めとする全員が木兎さんへ集まった。
「あー…一応聞く。何してんだ、誘拐犯」
「誘拐!?そりゃいかん!どこにいるッスか?」
「お前のことだ、木兎」
「俺?!」
「で、何してんだ?」
「おにぎりちゃん連れて来たッス!」
『………。』
普通に主将と会話を交わす木兎さん。
なかなか降ろしてくれない事に抗議したいのか、肩の少女は背筋を使って顔を上げた。
って…あれって…
「瑠璃咲…さん?」
『……赤葦君…』
特徴的なメガネをかけた少女。
まあ、確かに彼女なら「メガネ」と「女子」の特徴も間違っていない。
主に漫画のようなメガネのせいか、彼女の顔を見た瞬間、予想外のような顔をする先輩たち。
「え、何?知り合い?」
「クラスメイトです。とりあえず木兎さん。降ろしてあげてください」
そう言うと「おう!」と彼女を降ろす。
両足が体育館の床に着いた途端、全員に瑠璃咲さんの顔が見える。
自分より大きな男たちに囲まれた状態でも、臆することなくじっとこちらを見る瑠璃咲さん。相変わらず表情が全然変わらない。
『……バレー部?』
「おう、そうだ!」
『…何故私ここに連れてこられたのですか?』
急に連れて来られたから理由を聞かされていないのだろう。全く把握できていない様子。
俺は彼女の前に立ち、ここに来てもらった理由を話した。
何を考えているのか分からない彼女の顔はじっと俺の顔を見て耳を傾ける。
「――…というわけなんだ」
『……つまり、合宿での人手不足の解消と木兎先輩の希望、どちらも達成できるから入部してほしい…という事?』
「…まあ、ざっくり言うと…」
彼女からしたら何のメリットなどない。
でも、木兎さんではないが、このムダに顔が揃っている主将や先輩たちを目的とするような人より、瑠璃咲さんなら適任だと俺も思う。
「なあなあ!!おにぎりちゃん…」
『瑠璃咲です』
「瑠璃咲ちゃん、バレー部のマネージャーやってくれ!そしてまたおにぎり作ってくれ!」
「そんな勧誘の仕方があるか!!」
自由奔放な木兎さんのミミズクヘッドに拳を落とす主将。流石です。
「でもでも、マネージャーがまた増えるのはいいね!」
「ああ!!華が増えるしな!」
「入ってくれるか!?」
興奮気味に前のめりになる先輩たち。
ただでさえデカい男たちがそんなに迫れば普通の人だったら逃げ出しそうだ。
「どう、どう!?おにぎりちゃん!」
『………。』
瑠璃咲さんは…
『お断りします』
と、はっきり言った。
「ええ!何で!?」
『私に意味がないからです』
「意味ならある!」
『どんな?』
「バレー部楽しいぞ!」
『………。』
こちらもはっきり言った木兎さんの言葉に呆れしかでない。
それだけで納得できるはずもない。
『入部はお断りします。他をあたってください』
と、体育館を出ていった。
その後。
お気に入りのマネージャー候補に逃げられたことで、テンションが下がってしまった木兎さんを先輩たちと一緒に上げまくる放課後だった。