HQ×黒子夢小説

□第5試合 おにぎりちゃんとフクロウたち 誘い
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その日から・・・。










「瑠璃咲ちゃーん!!マネージャーやってくれー!!」









「ヘイヘイヘーイ!!バレー部カモーーンッ!」










「マネージャーーーー!!」









『………。』








昼休みに木兎先輩が教室来ては、マネージャーになれと誘われる。
朝練や部活を見に来いとか…




そんな毎日が続く。

同じクラスの赤葦君も見てるだけ。
あなたの先輩でしょ?手綱つけていてよ。






昼休み。


授業が終わってすぐ、木兎先輩が来る前にお弁当を持って入学式で見つけた場所へ逃げた。

もう葉になっているが、その時は満開の桜が綺麗だった木の下で腰を下ろす。
誰もいない静かなところ。
丁度いい気温に心地のいい風でのんびりしながらお弁当を広げた。


今頃木兎先輩が教室に来ているのだろう…
昔、お母さんから言われた。







「野生の動物に簡単にご飯をあげちゃダメよ?懐かれると大変だから」っと。






人間も動物だが、野良じゃない。
なのにこんなことになるのは何故?





食べ終えた弁当箱を片付け、しおりが挟まった本を開ける。
しばらく綺麗に並ぶ文字たちに目を通していると、誰かが近付いてくる音が聞こえた。


誰か来た。ゆっくり顔を上げるとそこにいたのは…








『……赤葦君』







先輩と同じバレー部のクラスメイト、赤葦君だった。





「…こんな所があったんだ」



『……入学式で見つけた』






私の目の前で立っている赤葦君から顔を本に戻す。




『何か用?』


「まあ、ぶっちゃけ言うと、バレー部の勧誘に来た」


『赤葦君も?』


「うん。って言うかまず…木兎さんがごめん…」


『別に』


「怒ってる?」


『何故怒るの?』


「…じゃあ、どう思ってる?」


『…何故そんなに私を誘うの?』








何の特別な才能なんて持っていない。
何も特別な事していない。

…また同じことを繰り返すだけだ。





『私が入部しても大して意味はない』



「………。」



『おにぎりだって、誰にでも作れる。差し入れなんて別に珍しくないんでしょ?』



「そんなにバレー部のマネージャー嫌なの?」



『嫌って言ったら諦める?』






バレー部に入ったらどうなるかなんて目に見えている。


人は本当に面倒くさい。
ちょっと自分たちと違う物があればすぐ対象にする。
綺麗な花が咲く花壇から雑草を抜くように、排除のために動く。
そんな人たちに付き合う時間、意味がない






「まあ…諦めないかな…俺も瑠璃咲さんにマネージャーやってほしいから」


『何故私?』


「だって瑠璃咲さん、真面目だし責任感あるから…
俺も…多分先輩たちもちゃんと仕事しないで騒ぐだけの人に入ってほしくない。
うるさい人は木兎さんだけで十分だから」


『………。』



「ねえ、一度だけでも練習試合を見に来てよ。土曜日、練習試合があるんだ。俺は出ないけど…。
もし、それでも瑠璃咲さんが興味がなかったら…まあ、また策を考える」


『……諦めないんだ』


「まあね…でも他の人にもあたってはみるよ」




でも、そんな約束していいの?
私が断ればまたマネージャー捜しに逆戻り。

勝手にそんな約束して先輩たちに怒られたりしないのかな?








「大丈夫。そう思わせないってわかっているから」








と、彼は笑って言った。
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