Bullet of the promise
□序章
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あの日…
周りには多くの人がいるはずが、視界に入ったのはたった一人の女しかいなかった。
隣で一緒に歩く子供の小さな手と繋ぐために伸びた腕は日焼けしていない白い肌
弱い風が長い黒髪を靡かせる
さざ波の音と共に乗せられた歌声が耳の奥まで通り…
横顔で見えた夕日の光で輝く
汚れを知らない…しかし、どこか儚げな瞳
遠い昔に出会った少女と重なるその青紫の瞳は…
…――記憶の奥深いところまで刻まれていた――…
「……――…」
静かな部屋でゆっくり目を開けた。
真っ暗な部屋、サイドテーブルにあるデジタル時計はまだ夜中を表していた。
何故今、こういう夢を見るのか、自分でも分からない。
「………。」
しばらく天井をじっと見ると、もう少し寝るか、と再び目を閉じた。
その翌朝。
ある女性は大きなキャリーバックを転がし、ヒールを鳴らしながら空港中を歩いていた。
長い黒髪を揺らしながら歩くその姿に周りの人々はすれ違う度に振り返り何度も彼女を見ていた。
本人はそんなこと気にせず、いや全く気付かずにまっすぐバス停まで歩いて行く。
外は快晴で日差しがまぶしかった。
彼女は手で影を作りながら上を見上げ、一言言った。
『ただいま。』
と。
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