Bullet of the promise
□第二六話
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『“怪盗キッドに告ぐ!”、か・・・』
いつものように沖矢さんの食事を作るため今日も工藤家に来て、先ほど食事を終わらせた。
が、食事後の片付けを終えたらすぐに帰るはずだったが、今日は沖矢さんからの誘いで、怪盗キッドの生放送をリビングで一緒に観ることになった。
『しかも、今回は繁紅の爪(パープルネイル)。
怪盗一人にどれだけお金を使うのかしら、園子ちゃんのおじ様』
「“繁紅の爪”…ですか?」
『私も “繁紅の爪”についている100カラットのアメジストは中世ローマ帝国の君主、マリア・テレジアも目を奪われたとだけしか知りません。
まあ、相談役はそんなこと気にしないと思いますがね・・・;』
「ホォ・・・鈴木財閥の相談役とお知り合いなのですか?」
『あ、いえ…両親が相談役話しているところを隣で見ていたくらいで、私が一方的に知っているだけです』
沖矢さんはその答えに“そうですか”と納得し、逸れていた話を戻した。
「まあ、キッドはなかなか捕まえられない怪盗ですから。
捕まえるために何度も仕掛けが必要でしょう。
しかも今回の場所は・・・」
沖矢さんは私が座るソファーの背もたれに腕を置き、後ろから彼女の隣にあるテレビのリモコンを取りボタンを押した。
テレビに映ったのは銀座のど真ん中。
「地上とは、なかなか考えたではありませんか?」
『意外ですね。沖矢さんがキッドのファンだったとは』
「いえ、私はただキッドのマジックを見て謎を解いていくのが好きなだけですよ。
ミステリー好きなのでね」
新聞からテレビに目線をやり、軽くため息をついた。
『沖矢さん見ていると何処かの誰かさんを見ている気がします。
トリックが分からないこそ人は面白さを感じるのに、ここにももう一人違うことに面白さを感じている人がいるとは・・・』
例えばあの事件吸引人物とか…。
「・・・(いや・・・分からないことが解けるからこそ面白いと感じるんだ。
友梨奈)」
テレビに顔を向ける私に沖矢さんがそう思っているとは知るはずもない。