Bullet of the promise
□第三七話
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「はあ・・・何分、このフロアは朝6時まで証明を落として薄暗くしてますし…
今日は警察の方が大勢通られたので、誰が誰やら…」
「鉄山先生が一番最初に来られて、その次が子供たちだというのは、覚えているんですが…」
結局、従業員二人に聞いても犯人は分からなかった。
「鉄山先生って特別にみんなより早くあの露天風呂に入れるって言っていたけど…
いつもそうなの?」
「ああ。先生は一番風呂が好きでね。
先生が泊まられるときは、いつも朝4時半前に風呂場には明かりをつけて、早めには通してたよ」
すると、さっきとはまた別の刑事さんが横溝警部に報告に来た。
今度は被害者、鉄山さんの指輪が一つなくなっているそうだ。
部屋に日売テレビ新人シナリオ大賞と書かれた空のケースがあったが、その中身である指輪がないと。
「ああ…大豆くらい大きな宝石が付いてるあの指輪ね」
「そうそう、シルバーのやつ。
講演会とかパーティーの挨拶とか…“ここぞというときにつけるお守りだ”と言ってたぜ」
そんな指輪はどこにもなく、もしかしたら、犯人が凶器と一緒に湖に捨てられた可能性がある。
あの人、何であんなことを…?
ある人の発言に首を傾げる。
横溝警部は容疑者三人の部屋から何も出なかったと聞くと、それぞれ気になる点があると答えた。
寺堂さんはマッチでタバコを吸うため部屋には、灰皿に大量のマッチの燃えカスが。
丹沢さんの部屋のバックに左手しかない手袋。
手袋は滑り止めのゴルフグローブ。彼は右利きだから左手だけだ、と。
そして、名取さんは役作りで台本にあったシーンを思わずしてしまった、とゴミ箱から割れたワイングラスと机の上に数ページだけくしゃくしゃになった台本があった。
「その役に集中して成りきるのが、私のやり方だから!」
『「(“役に集中して成りきる”?)」』
!!
「(そうか、そうだったのか!
あの人は役にのめり込みすぎて、忘れりまってたんだ…)」
その決定的な証拠を自分の懐に忍ばせていたことを
(なるほど、だからあの人はあんなことを言ったのか…)
彼らのアリバイが確認された。
今朝の5時半頃、名取さんから部屋の鍵をフロントで預かってそのまま。
寺堂さんは今朝の2時頃に“エアコンが故障している”と言って、部屋に従業員を呼んでいた。(結局彼の操作ミスだったが)
丹沢さんもフロントで千円札を百円玉に崩したことで事実だと分かった。
「〜〜っ、おい!
俺たち警察が来るまで、あの桟橋から本館に戻ってきた奴は本当に一人もいないんだな?」
「は、はい…」
「だとすると、今朝の時点じゃこの三人は本館にいたことになり、“犯人は一晩中あの湖上露天風呂に潜んでいた”という、この小僧の推理は、的外れだったというわけか」
「ムッ…だから、それは…」
横溝警部がコナン君を見て言うと、彼は何かを言いかけたら後ろからの足音に振り向くと・・・
「ふあ〜…」
博士が大きな欠伸をして、歩いてきた。
「あ、博士!」
「起きたのね」
『おはようございます』
「!!」
そんな博士を見て、コナン君はニヤッと笑った。
「となると、犯人はやはり湖から露天風呂に侵入し、鉄山氏を殺害後、再び湖に戻って逃げたんじゃ」
「よし!湖周辺の聞き込みを…」
「その必要はないじゃないかの?」
横溝警部の言葉を遮り、哀ちゃんと私以外のその場にいた全員遮る声の持ち主、博士の方に顔を向けた。
「何故なら、殺人犯はここにおるんじゃから…
ワシの目の前にな!!」
「「「「!!」」」」
「あー、ゴホン…おいおい、ワシは殺人のことなんて全く知らんぞ」(ヒソッ)
「いいから、俺の声に合わせてしゃべるふりを」(ヒソッ)
「何だ!?急にしゃしゃり出てきて!」
「ああ、いやワシは…
あの露天風呂に人が一人潜んでいたっていう痕跡が残っているのに、あんたらの目は節穴かと言っておるんじゃよ」
脱衣所にあったら何故か水が入った、お茶のペットボトルと、水面に浮いていたマッチの燃えカスがその痕跡だ。
ふきしたらしの湖の上に建つ露天風呂の外で、一晩中待つには寒すぎる季節だ。
かといってベランダから風呂場に入っても明かりも暖房も切られた脱衣所では、夜の寒さは凌げない。
とすると…
「暖をとる方法はただ一つ」
「まさか、温泉に入ってたというのか!?」
「ああ、そうじゃ」
お茶を飲み干し、脱衣所の洗面台の水を継ぎ足してまで飲んでたところを見ると、一晩で何度も入ったのだろう。
風呂に入ると喉が渇くから。
湖に浮いていたマッチの燃えカスは、眠気覚ましに一服したのだ。
風呂場に臭いが付かないようにベランダで。