Bullet of the promise
□第三八話
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『コレなんてどう?』
「そうね・・・出来ればフードが付いているものがいいわ・・・」
『ん〜・・・じゃあ、コレはどう?』
博士の家のソファで哀ちゃんとスマホを見ながらまったり中。
日に日に寒くなり、“新しいコートが欲しい”と言う哀ちゃんの一言により始まったコート探し。
右手でスマホを操作して、それを覗き込む哀。ちゃん
普段大人っぽい雰囲気を持つ彼女が、このように誰かに寄り添ってソファで寛ぐ姿を見れるのは、私と博士だけだろう。
そんな緩やかな空気は、電話を手にした博士の言葉に打ち消される。
「なに!?コナン君が誘拐されたじゃと!?」
「『!!?』」
その出来事に蘭から聞いた博士はもちろん、哀ちゃんと一緒に衝撃を受けた。
また事件に巻き込まれたのか、あの小学生探偵!
「しかも殺人犯にか!?」
≪う、うん!だから、コナン君の探偵バッジを追跡眼鏡で追って欲しいの!!≫
「わ、分かった!予備の眼鏡で追跡できるが・・・」
≪!!あっ、ごめんキャッチホン、コナン君からかも!場所が分かったら連絡して!≫
蘭から早口で用件を言われたら、通話を切られた。
「でも、一体どうやって追跡する気なのよ?
博士のビートル、今修理に出してるんじゃなかった?」
「!あぁ・・・
こうなったら、タクシーに無理を言って追ってもらうしか・・・」
『じゃあ、私が…』
「では、私の車で追いますか?」
追いしましょうか?、という前に、全く別の声が会話に加わった。
『!!』
「!!?」
ドクンッ・・・――
「申し訳ありません。立ち聞きするつもりはなかったんですが、クリームシチューのお裾分けに来てみたら、戸口で何やら不穏な会話が耳に入って…」
「す、昴くん・・・」
「ッ・・・――」
沖矢さんの登場に哀ちゃんが後ろに隠れる前に、さり気なく彼女を隠すように前に立った。
「さあ、追うなら早く・・・」
「し、しかし・・・」
「じゃあ!車の鍵(キー)だけ貸しなさいよ!私と博士、友梨奈さんで追跡するから!!」
「貸してもいいんですが、あの車は癖があって私の運転じゃないと・・・」
「だったら、ワシと昴君で追跡を・・・」
「ええ・・・それでも構いませんよ・・・
もしも君が友梨奈さんとここに残り、あの子の安否報告をやきもきしながら待っているつもりならね・・・」
『………。』
なんて意地悪いんだ、この人。
「もしよければ、君も一緒に行くことをお勧めしよう。勿論、無理強いはしませんが・・・」
「――ッ・・・」
沖矢さんの勧めに哀ちゃんの私の服の裾を掴む力が強くなった。
『…哀ちゃん。私も一緒に行くからそれで大丈夫?』
「友梨奈さん・・・」
『いいですよね?沖矢さん』
「ええ、僕は構いませんよ」
沖矢さんの二つの返事も来たことで、博士と哀ちゃんと一緒に出る支度を、沖矢さんは車を取りに戻った。
沖矢さんの車に乗って数分。
なんか色々行ってるな…酔いそう…。
「!!また動きだした。
今度は王石街道を南下して、鳥矢町方面に向かっているわ」
「了解。まだまだ追いつけそうにありませんね・・・」
「しかし、犯人はどこに向かっておるんじゃろう?うろうろ迷ってるようにも思えるが・・・?」
「案外、本当に迷っているのかもしれませんよ?
自分の望む、血に塗れた着地点が見つからずに」
ピロロロッ・・・ピロロロッ・・・
突然、車内に音が鳴り響いた。
『すみません。私のです』
音の正体は私のスマホの着信音だった。
懐から取り出し、長く続く音に応えた。
『もしもし』
≪あ、友梨奈さん!コナン君が・・・コナン君が!≫
『落ち着いて蘭。博士から話は聞いて、今一緒にコナン君の後を追っている。
貴女は小五郎さんと一緒に行動して。くれぐれも無茶なことはしないように、いいね?』
≪はい・・・≫
『心配なのは分かるけど、コナン君なら大丈夫よ』
パニックになっている相手を落ち着かせ、“何か分かったら連絡する”と言って通話を切った。