Bullet of the promise
□第三九話
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〜10年前〜
「えぇっ!?降りるって…」
野次馬が集まる中心で、当時警部補だった若き目暮が現場の策を超える男性の背中に向けて驚きの声を上げた。
「この事件から手を引くというのかね?」
「ええ、まあ…」
「そんな小説家に頼らず、我々警察だけで犯人を上げましょう目暮警部補!」
刑事だった若き小五郎も現場にいて、血まみれの男性と妙な字を見て言う。
「なにしろマスコミが騒ぎまくってますからねぇ!遺体の血で書かれたこの“死”って文字が…連続猟奇殺人の始まりじゃないかってね!!」
「大丈夫…これは殺人ではありませんから」
小五郎の言葉に男は意外なことを言う。
「で?でも…この死の文字は…」
「保証しますよ…この工藤優作が…」
そう言って振り向いた男。
事件現場にいた目暮や当時幼き息子も父の言葉に驚き、少年の手と繋ぐ高校生の少女は微笑みを浮かべた。
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「へぇ〜・・・工藤新一君の父親ってあの有名な推理作家の工藤優作なのか?」
「うん!今は日本を離れて海外で執筆されてるみたいだけど」
蘭、園子、真純は学校の登校しながら話していた。
「子供のころよく読んだよ!ナイトバロンシリーズとか」
「ま、そのお陰であの推理オタクな息子が出来上がっちゃったんだけどね」
「それよりさっきの話、本当か?」
真純が聞いたのは、先ほど蘭が工藤優作が唯一匙を投げた奇妙な事件のことを知っているという話だった。
「うん。新一のお父さんがまだ日本にいたころ、事件捜査協力をされてたんだけど・・・
その事件だけ途中で放り出したって新一すっごく怒っててさ」
「で?どんな事件だったんだ?」
「ん〜・・・確か、遺体の傍に血で何かの文字が書かれていて・・・」
「おい、大丈夫か!?」
その時、すぐ傍の路地から男の声が聞こえてきた。
路地を覗くと、二人の男の目の前には自販機にもたれ、ぐったりしている人が。
「しっかりしろ、高市!!」
「高市さん!」
「どうしたんですか?」
近くにいる男二人の話によると、なかなか仕事に来ないから探しにきたら、そこでうずくまっているのを発見したらしい。
「口から血がたれてるし・・・」
「一応救急車は呼んだんだけど・・・」
「・・・救急車は必要ないよ」
高市と呼ばれた男を調べていた真純が二人の男にそう告げる。
「亡くなってから、もう9時間以上経ってるみたいだからさ」
「「「「!!??」」」」
彼女は男をよく調べ、
黄疸が出ている白目
痩せているが肝臓が悪い証拠の腹水でぽっこり出ている腹
男がもたれている自販機の取り出し口に手づかずの酒
状況から、男が亡くなる直前に買おうとした可能性が高い。
肝臓を患っている患者なら、大概症状を悪化させるアルコールは避けるはずだが、それにも関わらず、酒を欲していた
これらを踏まえて、男がアルコール依存症だと見抜いた。
そんな真純の推理力に同級生二人は驚き、感心する。
「とまあ、普通なら、“アル中のおじさんが肝硬変による静脈瘤破裂で吐血し、その時周囲に誰もいなかったため、助けを呼べず亡くなってしまった”、と考えるところだけど・・・
でも、これは病死じゃない・・・
悪意を持った誰かの犯行さ」
真純の口から出た言葉に一同は驚きの声を上げた。
「その証拠に、このおじさんの真ん前に、ホラ・・・血で書かれた“死”って文字が」
「ちょ、ちょっと待って!この“死”って文字・・・10年前の現場にあった文字とそっくりだよ!」
「!?それってまさか・・・」
「さっき言ってた新一君のお父さんが諦めたという?」
「うん。あの時、新一に現場の写真見せてもらったから、間違いないよ!」
「………。」
その後、通報により駆けつけた警察と第一発見者である男二人にその場を任せ、自分たちは学校へ向かった。