Bullet of the promise
□第四十話
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見てるだけでも体が熱くなりそうなほど燃え盛る炎。
その中に佇む二人の男女の姿。
聞き覚えのある“彼”の声。
名を呼ばれ振り向くと友人が自分に笑顔を向けていた。
しかし、銃声が聞こえたと同時に、目の前の彼女の笑顔は一変し、ゆっくり体が傾いた。
彼女に駆け寄ろうと一歩踏み出すが、次に耳に入ったのは大きな爆発の音。
顔を向けると、見覚えのある車が炎上していた。
呆然と立ち尽くしている間に自分の周りの炎はさらに激しくなる。
そして…
黒いマントを纏う死神が怪しく笑うと、
いくつもの知る影が“紅”を流して倒れ、その誰にも止められないほど上がった炎に包まれていった。
『――ッ!!……ハァ…ハァ…』
静かな部屋で、夢から現実へ抜け出した。
額には汗がびっしょりと掻き、少し息切れもする。
ナイトテーブルに置いてあるデジタル時計はまだ夜中の3時を指していた。
片掌を顔に押し付け、フウッ、と一息をすると、とりあえずこの汗をどうにかしよう、とベッドから抜け、浴室へ向かった。
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「はいコレ。コナン君の分」
ある晴れた日。
コナン君と哀ちゃん、少年探偵団の皆と共に阿笠博士のビートルでキャンプ場に向かっていた。
私の膝の上に座る歩美ちゃんがコナン君に何かを渡す。
いつもは哀ちゃんが座っているところだが、今日は乗る前に歩美ちゃんが希望してそこに座っているのだ。
だってあんなくりくりした大きな目で見上げられて頼まれたら、断れなじゃない。
「今日はあゆみが友梨奈お姉さんの膝に座りたいな!」って言われたら…ね?
「ミステリートレインパスリング?」
「ほら、来週みんなで乗るベルツリー急行のパスですよ!今朝博士のところに届いたんです」
「その指輪を車掌さんに見せてピッってやって貰うと、乗せてくれるんだって」
子供たちの指には、すでにそのリングが通されていた。
「噂だとその列車、蒸気機関車で見てくれはまるでオリエント急行らしいわよ。クロスティの小説みたいに殺人が起こらなきゃいいけどね?」
「(んなわけねーだろ;)――って、オメーも今から指輪つけてんのかよ?」
「ええ。あなたが博士の家に来る前に、みんなで付けて写真撮ったから」
「キャンプ場に着いたら、コナンも入れてまた写真撮ろーぜ!」
「でも、友梨奈お姉さんは付けてないから、仲間はずれになっちゃう・・・」
自分の椅子代わりになっている私の指にそれはなく、元太君の案に困った顔をする。
ありがとう、その優しさでお姉さん胸いっぱいだよ。
そんな心優しき少女の頭を撫でて、微笑む。
『ありがとう、歩美ちゃん。でも大丈夫。
私もその列車乗ることになっているから』
「本当に!?」
『ええ。さっき知り合いから、一緒に乗ろうという誘いが来たから。
博士と同じく、今朝届いたみたいだから、まだ指輪は持ってないけど』
「ったく、外しとけよ!失くしちまったら――ハッ・・・はっくしゅ!!」
注意する途中、コナン君は盛大なくしゃみをした。
「コナン君、風邪?」
「昨夜、小五郎のおっちゃんがゴホゴホやってたから、移ったかも」
『大丈夫?ティッシュいる?』
「いや、大丈夫大丈夫」
「ちょっとマスクぐらいしなさいよ・・・」
「アハハッ…持ってねー…」
「たく・・・じゃあ、今薬出してあげるから、コレ飲んだら大人しくしてなさいよ」
「でも、楽しみだね!ベルツリー急行!」
哀ちゃんがコナン君に風邪薬を渡そうとしている間、歩美ちゃんと隣に座る光彦君と一緒に話していた。
「何でも、推理クイズもあるみたいですから、僕たち少年探偵団の出番ですね!」
『私の知り合いもその推理クイズを目当てに列車に乗りたいって言っていたわ。
まあ、彼は解く側じゃなくて、推理を聞く側だけどね・・・;』
「友梨奈さんと一緒に行くっていう人、男性の方なんですか?」
「もしかして、彼氏さん!?」
『アハハッ・・・違うよ。確かに同い年の男性だけど、彼氏じゃない。
悲しいことに、私そういう人いないし』
小学生でもやっぱり女の子。恋愛の話は大好きみたいだ。
すると・・・
「きゃあああ!エッチィ!!」
!!?
車内に哀ちゃんの悲鳴が響き、みんなの顔が彼女の隣にいるコナン君に向いた。
何したのかな?そこの中身高校生のちびっこ探偵!
「な、何やってるんですか!?」
「女の子いじめるなんて、ひどーい!」
『ひどーい!』
「あぁ、いや・・・いじめられてるのは俺のほうで・・・(にゃろう・・・)」
コナン君は皆の誤解を精一杯解くだけで、キャンプ場に着いたのだった。