Bullet of the promise
□第四一話
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あのキャンプから一週間後。
東京駅にはすでに大迫力の蒸気機関車が停まっていた。
それを目にする少年探偵団は瞳をきらきらさせ、歓声を上げる。
「まあ、SLなのは見かけだけ。中身は最新鋭のディーゼル機関車らしいけどね・・・ゴホゴホッ」
「哀ちゃん、風邪治ってないの?」
「ええ。誰かさんの病原菌がしつこくて」
「だったらうちで寝てろよ…」
「ほーら、ガキンチョ共!ベルツリー急行のオーナーである鈴木財閥に感謝しなさいよ。特別に席を取ってあげたんだから」
「「「はーい!!」」」
「まあ、ウチらの席はあんたらと違ってピッカピカの一等車だけどねー!」
「そーいえば、その一等車だよね?今度怪盗キッドが狙うって予告したの」
蘭がキッドの話題を出すと、園子は興奮したように話し始める。
今からコナンたちが乗るミステリートレインは年に一回しか運行しないが、園子の伯父、鈴木次郎吉相談役が特別に走らせ、ある宝石を一等車に展示すると発表したら、キッドがノってきたらしい。
「だから今回一足先に乗って彼への愛を込めた手紙を車内に隠してこようと思うんだけど、どうかしら!?」
「ど、“どうかしら”って・・・?そんな手紙、キッド取る暇ないと思うけど。
ていうか、京極さん怒るよ、本当に!」
両目をハートにして話す親友に彼女の彼氏のことを言ったら、“キッド様の愛は別バラなのよ!”っと、デザートと同じようなことを言った。
すると、そんな彼女たちの元に聞きなれた第三者の声が・・・
「僕はそんな泥棒よりも・・・毎回車内でやってるっていう推理クイズのほうが気になるけどな!」
「世良さん、どうして・・・」
『はあ〜い♪』
「友梨奈さんまで・・・どうしてココにいるの?」
会話に入ってきた真純と、彼女の後ろからひょっこり顔を出す友梨奈の登場に蘭たちは驚く。
「僕は探偵だかさぁ、乗るのは当然・・・―って君のパパは一緒じゃないのか?」
「あれ?さっきまでココにいたのに……あ!」
蘭は辺りを見ると、目的の人物は8号車に乗客する人たちにわけの分からない自己紹介をしていた。
“もう!”と言って娘はコナンと共に父の元へ駆けた。
「そういえば、友梨奈お姉さん、あのお兄さんと一緒に乗るんじゃなかったの?」
そんな親子の様子を見ていると、歩美は友梨奈を見上げて聞くと、彼女は眉間にしわを寄せて少女と目線を合わせるために腰を折った。
『それがね・・・』
『え!?ベルツリー急行、行かないの!?』
≪あぁ、すまない。急に仕事が入ったから、乗れなくなったのだ≫
発車前日の昼。
友梨奈はある人物からの電話がかかり、驚きの声を上げる。
『でも、一人で乗るのもな・・・折角自分のために取ったのでしょう?』
≪いや、元々お前のために取ったようなものだ。
俺の都合でお前までキャンセルするわけにも行かないだろう?≫
『………。』
≪他の誰かを誘って楽しんできてくれ≫
『――というわけなの・・・』
友梨奈の話に子供たちは“へ〜・・・”と納得の声を出す。
「で、それを聞いて、丁度僕も乗りたかったから、その彼のパスリングを貰ったってわけ!」
「でも、ひどいよね?前日になってキャンセルするなんて・・・」
『ええ。だから・・・
彼が言うように、列車内のクイズも終着後の旅も楽しんで、見せびらかしてやる!』(ニコッ)
「「「「「………;」」」」」
満面な笑みを浮かべる彼女に一同は苦笑いするしかなかった。