Bullet of the promise
□第四二話
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コナンたちはその後も事件の調査を続けていた。
コナンは小蓑さん以外の8号車の乗客に犯人の後姿を見たかもしれないため、スマホのムービーで廊下を走った後姿を撮らせてもらっていた。
「ねえ、メイドさん結構走るの速いけど、何かスポーツとかやってたの?」
「………。」
「ねえ、答えてよ。おばあさん?」
8号車全員のムービーを撮り終えたら、真純はそれを子供たちに見せてくると言って6号車のほうへ向かう。
その途中、ある部屋を通りすぎた彼女に安室が見て、スマホを操作した。
そして、トンネルに入り、廊下で女と火傷の男がすれ違うとき、女は口を動かし男に何かを告げた。
それを聞いた男は後ろをそのまま去る女の後姿を睨むように見ていると・・・
「誰だ?お前は・・・」
「!!・・・」
背後に現れた真純と向き合うと、彼女は激怒するように怒鳴った。
「!!誰だって聞いてんだよ!!」
「フッ・・・相変わらずだな・・・」
「―っ!!?」
「・・・真純」
「!!しゅ、秀兄・・・」
聞き覚えのある声と上げた男の顔を見て、真純は困惑する。
なんたって彼は・・・
「・・・秀兄?本当に秀兄なのか!?でも何で?
秀兄は死んだって・・・――っ!!」
ビリッ
「・・・その答えが聞きたかった」
隠し持っていたスタンガンをあてられ、気絶した真純を男が抱える。
「ど、どうかされましたか?」
「ご心配なく。妹は貧血気味なので」
車掌が“そうですか”と言って座ると、“赤井秀一”は真澄を抱えたまま、誰かにメールを送信した。
“障害は排除した
後は手筈通りに”
と。
ハッ
ハッ
ハァッ・・・
沖矢さんから離れ7号車へ移って、彼が追ってきていないと確認すると、腕に抱えていた少女を降ろした。
「友梨奈さん・・・私・・・」
『哀ちゃん。もし私が哀ちゃんだったら、今貴女が考えていることと同じことをするかもしれない。でもね・・・』
首に巻いていたスカーフを哀ちゃんの茶髪に被せあまった布を首に巻いたら、彼女の上着のフードをその上に被せた。
『貴女自身がいなくなると同時に“灰原哀”の存在が消えてしまうのは、私や他の人たちも嫌だ。
だから、本当にその考えしか出来ないときが来るまで、それは哀ちゃんの頭の奥に仕舞ってほしい。
また一緒にご飯作って、博士を含めて一緒に食べよう、ね?』
哀ちゃんは涙を浮かべ小さく頷くと、少女の頭を撫でたら両手を彼女の肩においた。
『いい?哀ちゃん。貴女は空いている部屋に入ってチェーンロックをかけてそこにいて。
私やコナン君が来るまで、絶対に開けてはダメ』
「友梨奈さんは?」
『大丈夫。私は蘭たちのところに戻って、哀ちゃんは大丈夫だって伝えてくる。
一応、哀ちゃんからも“大丈夫だ”って蘭にメールで伝えていて』
「・・・分かった」
哀ちゃんが了解したのを確認すると、もう一度彼女の頭を撫でながら立ち上がり、その場を走り去った。
「・・・(ごめんね、友梨奈さん)」
6号車と7号車の境にある通路に戻ると、沖矢さんはスマホをいじって立っていた。
髪を高く結い上げて彼を睨む。
「おや、友梨奈さん。どうしたのですか?」
『沖矢さんこそ、どうしてこの列車に乗っていたのですか?今日は知り合いに会いに行くと言っていませんでしたか?』
「ええ、ですから知り合いと一緒にこの列車に乗ってきたのですよ。それより・・・
あの少女をどこに隠しましたか?」
その沖矢さんの言葉に殺気を目の前の男に向けた。
『それは、貴方が誰で、敵か味方か分かるまで、答えるつもりはありません』
しかし、彼は眉一つ変えることなくいつものように続ける。
「どうしたら疑いが晴れますかね?」
『そうですね・・・この列車が停まったら、私と共に来てもらいましょうか。勿論、やましいことがなければ、来てくれますよね?』
「………。」
『こちらとしては、穏便に済ましたいのですが、貴方の返事次第で痛い目に遭うかもしれません。
さあ、一応聞きましょうか?』
YESか
NOか
そう問う私に沖矢さんの答えは・・・
フッ・・・
「・・・NOですね」
『そう、では・・・』
「――っ!」
一気に沖矢さんとの距離を縮め、一発目の蹴りを仕掛けた。
沖矢さんは驚きながらもそれを間一髪で避けたが、隙を作らないよう攻撃を次々と出す。
「驚きました。蘭さんと同じ、空手もしていたのですね」
『しゃべっていると、舌噛みます、よ!』
ガッ・・・
『――っ!?』
捕まれた右手首をそのまま後ろに回され、身動きが取れなくなった。
「・・・女性と戦うようなことはしたくないので。それと、貴女に聞きたいことがもう一つ」
『――っ・・・』
「何故そんなにあの少女を守りたがるのですか?」
『……貴方たちには…』
捕らえられたまま後ろの彼を強く睨む。
『貴方たちには一生分からないことだ。人の命も温もりさえ何とも思わず簡単に奪う、貴方たちには…』
「………。」
仕方ない。肩の関節を少し外して…
トンッ
『――っ!?』
ドサッ・・・
首元に痛みが走り、そのまま意識が落ちた。
友梨奈の素早く彼女の首に手刀を打ち、気絶させた沖矢。
倒れかけた彼女を腕に抱き、
「・・・悪いな、友梨奈」
と、呟いた。