Bullet of the promise

□第四二話
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ある個室で火傷の男はトランクを窓から蹴って外に放り捨てた。





「あら、随分じゃない?お気に入りだったのよ。あのトランクに入れてたワンピ。

ねえ?もうこんなこと止めたら?」





その個室に入ったのは、工藤新一の母、工藤有希子。

男は顎下に手をかけ、変装マスクを取り正体が現れた。



それは・・・








「シャロン?」







シャロン・ヴィンヤード、いや、黒ずくめの組織幹部、ベルモットだった。






「意外ね。あのボウヤが私たちとの争いに母親の貴女を巻き込むとは」



「自分で勝手出たのよ。

“相手が銀幕のスターなら、日本の伝説的女優である私をキャスティングしなさい”

ってね!」





有希子は扉を閉めて話を続ける。






「でも残念だわ。年を食っても輝き続けるメイクの仕方をいつか教わろうと思ってたのに?

大女優シャロン・ヴィンヤードはただの老けメイクだったなんて!」



「あら、結構辛いのよ。普段から老けたフリをするのって」






ベルモットは帽子を外し、高く束ねた髪を下ろした。



「それより、廊下ですれ違った時の貴女のあの言葉・・・」










「私たちが貴方を出し抜いたら、今度こそ彼女から手を引いてくれるわよね?」














「あれ、どういう意味?」



「言葉通りの意味よ。新ちゃん曰く、哀ちゃんはもうこっち側の人間だから」



「馬鹿ね。出し抜けるとでも思って?」



「知ってた?現在新ちゃんチームが一歩リードしてるのよ」







有希子との距離縮めて馬鹿にすると、彼女は笑みと明るい声でそう言う。






「貴女の部屋で気を失って寝かされてた世良っていう女の子。もう元の彼女の部屋に運んで置いたし!」



「あら、仕事が速いじゃない?でも変ね、ボウヤは今推理ショー中。

他に助っ人でもいるのかしら?」



「さ〜どうかな?こっちには、スペシャルゲストがいるかもしれないわよん♪」



「?………」




そのときまだ、ベルモットはウィンクをかます彼女の言葉の意味が分からなかった。
















ガタンッ・・・







ガタンッゴトンッ…











スピードを緩めることなく、走行する列車。


また別のある個室に沖矢は真純を抱えて入り、そっと彼女をソファに寝かせた。



立ち上がってその場を去ろうとすると・・・







「・・・しゅ・・・」







真純の声に足を止め、振り向く。











「・・・秀兄・・・」








寝言を言う彼女に沖矢はゆっくりと口角を上げたら、そのまま部屋を出た。





それから、自分の部屋に入るとそこにもソファに眠る者が。



沖矢は眠る彼女の肩に触れ、何か調べた。






「……外れていないな」






それが分かり、沖矢はほっと胸を撫で下ろした。




彼女が肩に何かしようとしていたのを気づき、いち早く気絶させたが、どうやら間に合ったようだ。



友梨奈の閉じられた目の端からこめかみへ雫が流れ、先程のことを思い出す。








彼女の動きを止め、自分の問いに答えたときの彼女の目。



強く睨む目には涙が溜まっていた。







流れる涙を拭いながら、沖矢は一体何を思ったのだろうか。













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その頃、眠りの小五郎により、事件は解決された。



室橋さんを殺害したのは、彼がいた部屋の隣C室の安東さんだった。




彼は鑑定依頼の絵のカンバスとカンバスの間に三枚の鏡を使ってのトリックを使い、室橋さんのいる部屋を出入りしたのだ。




その時、丁度列車はトンネル内だったため、誰にも気づかれることなかった。





動機は、8号車の乗客の誰もが体験した5年前のある屋敷の火事。




その火事を起こしたのは被害者の室橋悦人だった。室橋さんは、その屋敷の絵を盗み出し、そのことを隠すために屋敷に火を放ったのだ。大勢の被害者を巻き込んで。



安東さんは、室橋さんが自分たちと同じように火事で亡くなった方々やその屋敷の家主一家を弔うために毎年発進されるベルツリー急行に乗車しているのなら、自首を勧めるつもりだった。






だが、偽の推理クイズの被害者役として犯人役の自分と一緒に探偵役の子供たちを待っている間、室橋さんは・・・









“やっぱこういうの興奮するな!生きてるって実感できるっていうか、煙に巻かれて命かながら救出されたあの火事を思い出さないか?









頬を紅潮させ嬉々として言った。








「あの火事私の妻はで煙に巻かれて死んだっていうのに・・・」






両目に涙を流して話す安東さんに他の者はかける言葉が出なかった。
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