Bullet of the promise
□第四二話
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「有希子・・・私たちをけむに巻きたいようだけど・・・貴方たちに勝ち目は」
「大ありよ。だって新ちゃん、シャロンの弱み掴んじゃったんだもの」
「もしかして、貴女が私の友人だから手が出せないとも?」
「シャロンの仲間、知らないんじゃない?新ちゃんとあの子が薬で幼児化してるってこと」
「………。」
「捜索対象を小学生に絞れば、見つけるのは時間の問題なのに・・・
新ちゃん言ってたわよ。薬で幼児化していることを隠す理由が貴女に何かあるんじゃないかってね。
それと…
板倉卓」
有希子がその名を出したとき、ベルモットは目を細めた。
シャロンと有希子が知る、映画特殊視覚効果に携わっていたCGクリエーター。
シャロンが彼に何かのソフトを発注したことを息子から聞いて驚いたと続ける。
シャロンと板倉はある映画でぶつかって、犬猿の仲だと役者仲間がもらしていたのだから。
「貴女のことだから、彼への依頼の電話は声を変えてたんでしょうけど、そうまでして発注したソフト、幼児化を隠す訳と何か関係があるのかしら?」
ガチャッ
「有希子、そこまでよ」
ベルモットは拳銃を取り出し、有希子に向けた。
「手を引きなさい!貴女のふざけた作戦ならもう読めているんだから」
「さ、作戦?なんのこと?」
「彼女が列車内で私たちの存在に気づけば、彼女の取る行動はたった一つ」
あの薬の解毒薬を飲んで元の姿に戻ること。
もしも幼児化したままの姿で殺害され、遺体が車内から発見されたら、あの子供たちが泣いて騒ぎ立ててしまう。
その点、元の姿に戻れば、例え遺体が発見されたとしても、子供たちにとっては一度会っただけの女性の遺体。
姿を消した彼女の方が心配で、それどころじゃなくなり、組織の視界から外れる可能性はある。
工藤新一や阿笠博士、星宮友梨奈はそうは思わないだろうけど、まさかその女の遺体が幼児化する前の元の彼女の姿だなんて言えやしない。
「そう、貴女はきっと彼女ならそうでると予想して、薬を飲む前に彼女を保護し、元の彼女の姿に変装した貴女が我々に殺されたフリでもして、組織の目を欺く算段だった、って所かしら?
この貴女の部屋に彼女が匿われていないってことは、どうやらまだ彼女を保護できていないようね。
まあ、あのFBIの星宮友梨奈も彼女の行動を予測して、あの人が彼女を保護している可能性があると思ったが、さっき私の仲間から、あの人が気絶して運ばれているところを見たみたいだし、貴女のその様子だと、作戦ことあの人は知らないみたいね」
ベルモットは有希子を壁に追い詰める。
「な、何言ってるの?さっきシャロンが窓から捨てた私のトランク、中身みたでしょう?あの中に変装道具なんて入ってた?」
「悪いわね。トランクの前に処分させてもらったわ。この・・・」
「!!――っ」
「洗面台の中に隠してあった変装道具も血のりの仕掛け付きの防弾ジャケットもね」
追い詰めた洗面台の扉を開けそう言った。
「で、でも、シャロンもあの子を見つけてないならまだ五分五分じゃない?」
「No ploblem、ご心配なく。彼女を炙り出す準備なら、もう整っているわ」
そう言って、ベルモットは持っていたスマホをクリックした。
すると、室橋さんが亡くなっている8号車のB室から煙が舞い上がった。
「安東さん、後は警察で・・・」
「―っ!ちょ、ちょっと何のあの煙!?」
煙はドアと床との隙間から廊下に出て、それを出波さんが最初に見つけ、声を上げた。
安室が様子を見てくるといって煙が出る部屋のドアを開けると・・・
「火事?火事だ!皆さん早く前の車両に避難を!!」
「おじさん、起きて!おばあさんたちも早く!」
安室が声を上げてそう言うと、安東さんたちはパニックしたように顔を真っ青にして走り出した。