Bullet of the promise

□第五四話
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コナンSIDE






友梨奈姉が出て行って3時間半が経過した。




教会はそんなに離れていないはずなのに、なかなか帰って来ない彼女に皆心配していた。



すると、おっちゃんの携帯電話が鳴り出した。
友梨奈姉からみたいだ。



おっちゃんは皆に聞こえるように通話ボタンを押すと、スピーカーモードにした。




「友梨奈ちゃんか?なかなか戻って来ないから心配したんだぞ」



≪すみません。次の場所に行っていました。このまま向かった方が早いですので…≫



「次の場所はどこなんだ?」



≪今森の中にある湖に向かっています≫



「よし、分かった。くれぐれも気を付けて」







おっちゃんが通話を切るとほぼ同時にリビングの扉が大きな音をたてて開き、皆が顔を向けると…





「どうした、灰原?そんなに急いで」




肩で息を整える灰原の姿が。

その顔から明らかに焦っていることを物語っていた。



そして、息切れしながら彼女の口から告げられた言葉に一同目を見開いた。








「あの子たち…小嶋くんたちここに来てない?!」



「来てねーけど…まさかッ…」



「私がちょっと目を離した隙にいなくなって…」



「あいつ等、友梨奈姉ちゃんの後をついて行ってるんじゃ…」



「何だと?!」



「いかん!もしかしたら、犯人の仲間がその辺にいるかもしれん!」



「それに、もし子供たちがついて行っていることが犯人にバレたら、人質の身も危険です」



「兎に角、行ってみよう」







博士と灰原、蘭と園子を別荘に残し、他は俺の追跡眼鏡を使って元太たちのもとへ急いだ。






SIDE終了





























『ここにあると思うんだけど…』







湖に着いて、カードを探すためにあたりを見渡す。




この事件…すべてバレエの話の一部を絵にして暗号となっている。

ということは、まさか…






まさか本当に“あの人”が…?





ある人物を思い出していると、視界の端に何か光るものが映った。






『あれは…』






それは一つのビンが湖の水面に浮いており、中には紙らしきものが入っていた。





あれ?さっき見たとき、湖にあんなの浮かんでいたっけ…?





不思議に思い、ビンが浮かぶ湖のほとりで膝を立ててそのビンに手を伸ばす。






『…もうちょっと……よしっ!』






取ったビンの中には二つ折りにされた紙。


大きさからして、今までと同じカードだと思われる。





開けようと蓋を触れた時、背後から人の気配を感じた。







『!!―――ッ…」








振り向くと、その場に組み敷かれた。

持っていたビンは手から離れ、近くに転がる。
ああ…おむすびころり…






目の前には帽子を深く被った男と






首からの圧迫感。









ああ…自分は今、目の前の男に首を絞められているんだな…

と、他人事のように理解した。





男の両手を離そうと手首を掴むが、所詮男と女。


力では圧倒的に不利だ。







そのうえ、ここは森を少し深く入った湖。

助けを呼ぶどころか、この状態に気づく人は誰一人といない。






マズいッ…






圧迫が思いの外強く、早くも男の姿がぼんやりしてきた。



手首を掴む自分の両手の力も抜け、重力に従って地に落ちる。



瞼も落ちてきて、意識が飛びそうになったその時…








「友梨奈の姉ちゃんに何すんだ!!」



「離れなさい!!」



『!!?』





あの子たち、どうして…!?




聞き覚えのある声に視線を向けると、遠くから大声を上げてこちらに近づいてくる小さな影が3つ。



それと…






「元太、光彦、歩美…!!」



「!!友梨奈ちゃん!!」






反対側からもこちらに走ってくる影を見て、沈みかけた意識が浮上した。






『―――ッ…』






ドスッ…






「グッ…」







両手をほとりの淵に掛け、腹筋を使って両足を男と自分の間に入れると、最後の力ふり絞って勢いよく男の鳩尾に蹴りを入れた。


どうだ!思い知ったか!



痛みに男はそこを抑えながら離れ、私はせき込みながらも酸素を肺に送った。








「ッ…どけ!」



「待て!!」







男は子供たちの方へ走ると、懐からナイフを取り出し、それを振り自分の道を作るとそのまま逃げた。


小五郎さんも男を追いかけた。







「友梨奈さんッ!」





珍しく声を上げた昴さんは、絞められた喉に手を当てながらせき込む私に駆け寄り背中をさすった。















______
_____
___






空がすっかり赤くなっている時刻。



結局、男は逃げられ、別荘へ戻った。






「お前ら分かってんのか?!犯人は友梨奈ちゃん一人で来るように指示してきたんだぞ」




「「「ごめんなさい…」」」






そして、小五郎さんの怒鳴り声と子供達の謝罪の小さな声がリビングに響く。





一方、私はソファで蘭の手当てを受けていた。


蘭が言うには首は男に強く掴また跡で赤くなっているようだ。

何て事してくれたんだ…





一通りの手当てを終え、蘭に礼を言うと、子供たちを叱る小五郎さんの方に顔を向ける。






「子供だろうが何だろうが、人を連れてきていたら、人質がどうなるか分からないんだ!」



「それに、下手をしたら君たちの中からまた人質になる恐れだってあるんじゃ。

無茶なことしてはならん」






いつも子供たちの味方である博士も彼らの行動に注意をする。






「だから俺もお前たちに“この事件に関わるな”と言ったんだぞ」



「でも、私たちも劉お兄さんを助けたかったんだもん!」



「友梨奈さん一人で犯人のところに行くなんて危ないと思って、後をついて行ったら…

あの男の人が友梨奈さんの首を絞めていて…」



「友梨奈の姉ちゃんが危ないところ助けたんだからいいじゃねーか!」



「良くない!今回その男は逃げたみたいだけど、ナイフを持っていたなら貴方たちの危険もあったかもしれないのよ!」








哀ちゃんにも怒られて、しょんぼりと顔を下に向ける子供たち。ああ…耳が…垂れ耳が見える…。

ソファから立ち上がると彼らの前に膝をついた。








『皆、歩美ちゃんたちを心配して怒っているの。犯人は本気で私を狙っている。

今回のことでそのことが分かった以上、貴方たちを危険な目にあわせるわけにはいかないんだ。


分かるよね?』






静かに言うと、素直な子供たちは小さくうなずく。



“でも…”と俯いた歩美ちゃんの片頬に手を当て顔を上げさせ、もう片方を元太君の肩に置いた。








『ありがとう。劉の心配をしてくれたり、私を助けてくれて。

あの時、貴方たちの声が聞こえなかったら、私はあのままで大変なことになっていたかもしれない。


お手柄だったね』






お礼を言われ、パアっと笑みを浮かべる子供たち。可愛い…






『でも、犯人を怒らせたら逆に劉の危険もあるから、もう駄目だよ。あとは私たちが何とかする。


いいね?』



「「「はい!!」」」






元気な良い返事を聞いたら、笑顔で返し、立ち上がった。
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