Bullet of the promise
□第五五話
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別荘から出た友梨奈は、ある場所にたどり着いた。
扉を開けると、そこには複数の男と一人の女の影。
「よく来たね。さすが元刑事の一人娘と言ったところかしら?」
『やっぱり貴方だったのね。
天河茜さん』
窓から月明かりが入り込み、女の影を照らす。
照らされた彼女は怪しくにやりと笑い、その瞳には憎しみしか映っていなかった。
「あら、私のことも分かっていたのね」
『ええ。“一 葵”の名と、そして、カードのヒントとなったバレエの執着を見たら、ね』
「それだけで私だと?」
『それと、カードで指示した場所に多くのトラップ。
ボーガンやお金で雇ったであろう男…
けど、どれも私を確実に殺すためではなかった』
その証拠に、ボーガンを見つかりやすいところに置き、私がかわせるようにしたり、
男はナイフを持っていたのにも関わらず、刺殺ではなく絞殺の方法を選んでいた。
『このことから、犯人は否が応でも自分の手で私を葬りたいのだ、と感じたよ』
「そう…それで?指示通り貴方が一人で来たってことは、私があなたを恨んでいる理由に心当たりがあるってことよね?」
『ええ。でもそれより、劉よ。彼を開放して。あの人は関係ない』
「勿論。彼は開放するわ。
貴方が私の恨みを晴らしてくれたね!」
天河の合図に男たちは友梨奈を囲んだ。
「まさか、友梨奈君が既に謎を解いていたとは…」
一方、リビングに集まったコナンたちは一刻も早く彼女と劉の居場所を突き止めるためにもう一つの謎、カードの端に書かれた“花”、“涼”、“月”の意味を考えていた。
ぶつぶつと考え込む小五郎は、何か当てはまるものを見つけたのか、“分かった!”と大声を上げる。
「“鏡花水月”!“花”と“月”が入ってるだろ!」
「じゃあ、“涼”の字は?」
「そ、それは…;犯人が間違えたんだよ!」
「無茶苦茶ね…;」
「それに、“鏡花水月”でどこに行けばいいのか、分からないじゃない?」
“我ながら名推理!”と自信満々な顔で言う小五郎だが、高校生2人と哀によって否定された。
「漢字ばっかり…」
「漢字と言えば、友梨奈さんが持っていた楽譜の本…」
「楽譜?」
光彦と歩美の会話を聞いていたコナンは聞き返す。
「ええ。確か表紙に、“滝”と“太郎”は読めたんですが、その間にある漢字は読めなくて…」
「それ、いつ?」
「晩ご飯の準備ができたって友梨奈お姉さんを呼びに行った時だよ!」
「その本、見た方がいいかもしれませんね。
今はとにかく手がかりが欲しいですし、友梨奈さんが見ていたっていうのも気になりますから」
子供たちの案内によって、一同はリビングから楽譜がある部屋へ移動した。
「えっと…あ、あれです」
光彦が指した楽譜を小五郎は本棚から取り出した。
“滝廉太郎名曲集”
「滝廉太郎って、よく音楽の教科書に載っている日本人作曲家だよね?」
「けど、何でそんなものを友梨奈ちゃんは見ていたんだ?」
楽譜をパラパラっと捲るが、特に何かが挟まっているわけではなかった。
だが、それを下から見ていたコナンが裏表紙に書かれた曲目の一覧を見て、何かに気づいた。
「おじさん!ちょっと見せて!」
「お、おい!」
コナンがあまりにも強く服の裾を引っ張るため、小五郎は仕方なくコナンにそれを渡した。
“何だ何だ?”と一同は目次を開く少年へ顔を向ける。
「おじさん、ここ!」
「何なんだ一体…!これは…」
コナンは目的のところを見つけるとそれに指さして小五郎に見せた。
コナンの指の先を見た小五郎もそれを見て目を見開く。
そこには、“組歌「四季」”と3つの曲名。
“花”、“納涼”、“月”と書かれていた。
「カードと順番も漢字も一緒だ!」
「“花”が春、“納涼”が夏、“月”が秋だから…次は“雪”、冬ってことね!」
「でも、これでどこに行けば…」
「滝村旅館だ。その作曲家の名前と作品をとって別館に名付けたって女将さん言っていたから」
光彦の問いにコナンは答える。
「ってことは、滝村旅館の冬館の…えっと…」
「あの旅館の部屋の名前はその季節に関係するもの。“雪の間”になります」
「それに、今冬の館は工事中で立ち入り禁止。誰も通らないってことね」
「兎に角、滝村旅館に行って、冬館の場所を教えてもらうぞ!」