Bullet of the promise
□第五六話
1ページ/7ページ
ブロロロロッ…
空は昼にも関わらず真っ暗で、雨雲から大量の雨が降っていた。
そんな土砂降りの中、雨合羽を纏い、同じバイクに跨り前で運転する彼女のお腹に腕を回す。
『でも、どうして急に軽井沢に?』
「なんでも、園子君が僕たちに会わせたい人がいるみたいなんだ!」
少し大きな声で話しかけると、彼女も声を上げて答える。
他愛もない会話をしているうちに、目的地である軽井沢のボウリング場に着き、真純ちゃんは慣れた様子でバイクを止めた。
バイクから降りると、雨具を脱ぎ、彼女のバイクの座席下に入れていた自分のバッグから折り畳みの傘を広げる。
二人でその傘に入りボウリング場へ向かった。
傍から見るとカップルだね♡
中に入った二人は、蘭たちが何処にいるかときょろきょろあたりを見回していた。
「あ、友梨奈さん!世良さん!こっちこっち!!」
私達に気づき手を振る蘭の姿を見つけ、彼女たちのもとへ近づいた。
「お待たせ!」
「雨大丈夫だった?」
「ああ!友梨姉がいろいろ用意してくれてたからな!」
蘭、園子ちゃん、真純ちゃんが話している中、ビールの缶を開け、すでに酔っている小五郎さんを見つけコナン君に小声で話しかけた。
『小五郎さん、どうしたの?』
「元々テニスだったのに、この雨のせいでボーリングに変わって…ミニスカテニスギャルが拝めなくてやけ酒になってるんだよ…;」
コナン君の答えに苦笑するしかできない。
そんなこんなで、一度中断していたボーリングを再開することとなった。
_______
_____
___
ガコォンッ!
「やった!ストライク♪」
「流石蘭!」
「やるなぁ!」
『すごいじゃない!』
「テニスは残念だったけど、ボウリングも楽しいね!」
「次友梨姉だよ!」
『う、うん…』
真純ちゃんの声に少し緊張しながら、ボールの穴に指を入れ、構えた。
一時じっと構えて、決心してボールを投げた。
投げたボールはピンへ向かいまっすぐ向かった…
よし、いい感じ…
が、急にカーブがかかり…
あれれ…おかしいな…
ガタンッ…
ガータへ落ちた。
やっぱりダメか…
『………。』
「………。」
・・・・・。
一時沈黙。
振り向くと、蘭たちは目を点になってしまった。
ちょ、誰か何か言って…
「も、もしかして友梨奈さん…」
「ボウリング初めて?」
『…ううん。何度も劉の家族と一緒に行ったけど、全然ダメで…』
何度も来ているはずなのに…何で?
落ち込んで真純ちゃんとは反対の園子ちゃんの隣の席に戻る。
誰かが「意外…」と呟く声が聞こえた。
いいもん、もうこういう空気は慣れたもん…くすん。
「そういえば、友梨奈姉ちゃん、サッカーもダメって言ってたね?」
『何故か、ボールが思い通りに行かなくて…;』
「へえ〜…友梨姉にも苦手なことあったんだ」
真純ちゃんの言葉に蘭たちは同感と首を縦に振る。
「あ、ほら、次コナンくんだよ」
「うん!」
コナン君にエールを送り、観戦する。
「それで、誰なんだよ?僕たちに会わせたい人って」
「ああ、それは…土砂降りのテニスコートで4時間も待ってた人よ!今、濡れた服を着替えててもうすぐ来ると思うから」
「勿体ぶらずに教えてくれよ〜!この雨の中バイク飛ばして来たんだからさ!」
真純ちゃんは園子ちゃんの肩に腕を回し、じゃれていると…
ガシッ…
「『!!?』」
真純ちゃんの肩を男性の大きな手に強く掴まれた。
後ろを振り向くと、凄いしかめ顔で彼女を睨む男が立っていた。
お、おお…凄い殺気…
「何だお前?僕とやろう…てのかッ!?」
ビュンッ!
男に真純ちゃんは椅子の背に手を掛け飛び蹴りを仕掛け、男にかわされても瞬時に男の目に向かって指先を突き出す。
が、それも男は上手く避け、彼の掛けていた眼鏡が飛ばされた。
真純ちゃんは飛んできた男の膝を避けたが、すぐに腹部あたりに狙われた攻撃を交差した両腕で受け止め、後方へ飛んだ。
衝撃を耐えた真純ちゃんはニッと笑いながら男を睨んだ。
「おもしれぇ…ぶちのめしてやる!!」
ってあれ?あの人…もしかして…
眼鏡とタオルが取れた男の顔を見てそう思った。
「あ、違うの世良さん…その人よ!園子が世良さんたちに会わせたかった人って」
「え!?」
蘭がとっさに真純ちゃんを止め、二人の誤解を解く。
「えへへ…私の彼の京極真さん!彼女はクラスメイトの世良真純さんよ!」
「じょ、女性でしたか…申し訳ない!てっきり園子さんに絡んでる不埒な男かと…」
「気にしなくていいよ!男に間違われるのはいつものことだから」
「それと、此方が…」
「もしかして、星宮友梨奈さんですか!?」
真純ちゃんの隣に来た私の紹介する園子ちゃんを遮った彼は声を上げて聞いてきた。
う?何で私の事知ってんだ?
彼は有名だから私は知ってるけど…
『え、ええ…そうですけど…』
「真さん、友梨奈さんと知り合いなの?」
「いえ、自分が一方的に知っているだけです。
9年前、全国高校女子空手大会で優勝をされた方ですよね?」
『ええ。確かに高校の時、その大会で優勝したのは覚えてますが…』
「自分も父に連れられて、その大会を見に行ったことあるんです。女性でも相手の形を見るのも修行だと。
その時見たあなたの技の数々、素晴らしかった。
お会いできて、光栄です!」
『私もまさか世界的選手、400戦無敗の蹴撃の貴公子にこんなところでお会いできるなんて…光栄です』
と、握手を交わした。
そんな私達を隣でポカンとしている園子ちゃんにこっそり言った。
『大丈夫よ、園子ちゃん。京極さんは貴方しか見てないから…』
「え?」
『じゃなかったら、男と勘違いしてたとしても、貴方にじゃれていた真純ちゃんをあんなに殺気立たせて睨んでいないよ』
「――ッ!///」
『大切に想われているのね、羨ましい』
その言葉に園子ちゃんは一気に顔を赤らめた。
あら、リンゴちゃんの出来上がり!
「あ、そうそう、園子も止めてよね!」
「え…だ、だってー、二人が戦うとこ見てみたかったんだもん!」
「全く怪我でもしたらどうすんのよ…」
「アハハ…面目ない;」
「まあ、いいじゃないか。僕ももう少し、彼と戦ってみたかったし」
「もう…;」
蘭が園子ちゃんに注意している間にコナン君から眼鏡を受け取った京極さんは再び彼女たちと向き合った。
「截拳道、誰に教わったのですか?」
「兄だよ…それと彼女にも」
真純ちゃんは私に視線をやりながら話した。
「男に比べて女は力が弱いから、女でも有利に立てる戦い方を教えてくれてね」
『でもさっきの戦いはよかったよ。強くなったね、真純ちゃん』
柔らかい真純ちゃんの髪を撫でたら、彼女は嬉しそうな顔をした。