Bullet of the promise
□第五七話
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良く晴れた日曜日。
季節の変わり目で、最近だいぶ温かくなった。
『白玉餡蜜セット一つと抹茶ラテ一つ、お願いします』
「はい!」
今日も和風喫茶店のバイトに精を出していた。
『失礼いたします。お待たせ致しました。抹茶ラテと…白玉餡蜜をご注文のお客様はこちらでよろしいでしょうか?』
「ありがとうございます」
「友梨奈さん!みたらし団子セット二つ、お願いします!」
『みたらし団子セット二つですね?かしこまりました』
もうすぐ正午を差す時刻。
昼食を求めて次々と喫茶店へ足を運ぶお客たちが出入り口のベルを鳴らし入ってくる。
「ありがとう、美味しかったよ」
『ありがとうございました』
会計を終えた客の見送りをした時、鈴ちゃんが話しかける。
「友梨奈先輩。今日はもう上がって良いそうです。昼まででしたよね?」
『ええ。でも、これから忙しくなるんじゃ…』
「大丈夫です、加藤さんが先輩と交代で入っていますから」
“それに…”っと続けて鈴ちゃんは私の耳に顔を寄せてきた。なんでしょう?
「裏に可愛いお客様が二人、待たせているのです」
『え?』
『蘭、園子ちゃん!?』
「「こんにちはー!」」
更衣室に行くと、そこには二人の高校生がお茶を飲んでまったりしていた。
こら、園子ちゃん寛ぎすぎ。下着見えちゃうよ。
蘭の側には大きな紙袋。
『どうしたの?二人して…それに、何?その大きな紙袋…』
与えられた棚に着替えた制服たちを入れながら訊く。
不思議そうな顔をする私とは違い、蘭たちは(特に園子ちゃんは)ニヤニヤと怪しい笑みを浮かべる。
え、何?何かしたっけ?
「「さあ、友梨奈さん…」」
『ヒッ…!』
ジリジリと近づく彼女たちに恐怖を感じる。
ちょ…なんか手の動きが怪しいですよ!お嬢さんたち!
その直後、更衣室内でお店には届かない程度の悲鳴が響いた。
喫茶店から近い公園前。
見覚えのある人が、道路わきに停まっている車に軽く背中を預け立っていた。
「お待たせしましたー!!」
園子ちゃんの明るく元気な声で彼は顔を向ける。
「お待たせしました!」
「すっごくいい仕上がりになりましたよ!」
“ほらっ!”、と二人の影に隠れていたら背中を押され、彼の前に出される。
「………。」
頭にはカンカン帽、
ストレートの髪は軽くまきまき巻かれ、
真っ白な膝下までのワンピースに
裾の短いデニムカーディガン
いつも履いている靴よりヒールが高めのサンダル。
このサンダルと動きにくいワンピースで、園子ちゃんに手を引かれながら急いで連れて来られたから、ちょっと息切れ。
『昴さん…ちょっとどういう事?急にこれに着替えろって言ったり連れて来たり…』
「まあまあ…最近友梨奈さん、バイトで忙しいから…」
「たまには息抜きしたらどうかな〜…って…」
顔をしかめて蘭たちに振り向くと、彼女たちはなんか慌てだした。
『全く…昴さんも彼女たちの遊びに付き合わなくても…』
「いえ、僕もたまにはどこか出かけようと思っていたので…
蘭さんたちにこの事を聞いて、どうせなら一緒に出掛けよう、と提案したんですよ」
「ほら!一人より二人がいいと思って!」
「今日、私たちはこれからデパートで買い物がありますし、コナン君は博士と子供たちと一緒にキャンプで…」
「劉さんは仕事で忙しいみたいなので、昴さんの提案に賛成したんですよ!」
『………。』
明らかに怪しいと思うが、今は何も言わずため息をついた。
「まあ、急な事で驚いたと思いますが、折角の彼女たちの好意、受け取らないわけにはいかないでしょう。
それとも、僕とでは嫌でしたか?」
『あ、いえ…そういう意味では…』
「では、行きましょう?」
“さ、車に乗ってください”、と昴さんにエスコートをされながら、渋々と乗る。
昴さんも蘭たちに軽く会釈をすると、自分も車に乗り発進させた。
「「いってらっしゃーい!!」」
そんな私たちを乗せて去る車を蘭と園子ちゃんは満面な笑みを浮かべながら手を振っていたのをミラー越しに見えた。