Bullet of the promise

□第五九話
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木々を抜けた先には玄関の扉だけ真っ赤で少々不気味だが、立派な木造の別荘が建っていた。





5人でその貸別荘の前で突っ立っていたら、この貸別荘の客たちで真純ちゃんの兄の依頼人たちと出会う。





最初に来た峰岸珠美さんは私たちに挨拶し、

次に来た河名澄香さんは人見知りで真純ちゃんにプリントアウトした写真を渡したらさっさと別荘に入った。



河名さんの次に来たのは、任田甚輔さんと薄谷昌家さん。



相変わらず初対面の人に男と間違われる真純ちゃん(こんなに可愛いのに…)は二人に自分は女で彼らの同級生の妹だと言うと、2人して驚いていた。












昼食の時間になり、一同は峰岸さんのお手製ハンバーグをご馳走になる。




ハンバーグの上に半熟の目玉焼きが乗っており、ナイフを入れると黄身がトロリッとハンバーグにかかる食欲をそそるものだった。

ていうかとても美味しい。








「美味しーい!」



「ホントすっごく美味しい!」



「世良の姉ちゃん、ナイフとフォークの使い方上手いね」



「子供の頃は全然だったけど、3年も外国にいたら慣れちゃったよ」



「流石アメリカ帰り…」



「友梨奈さんも流石ですね!」



『まあ、アメリカに長くいたっていうのもあるけど、子供の頃、よく母にテーブルマナーは厳しくされていたから』



「子供ってなんでもすぐ覚えちゃうもんね…そういえば、皆さん何の集まり何ですか?」





コナン君の口元に付いたソースを拭きながら、蘭は依頼人たちに聞いた。





「高校のアウトドア部」



「皆で山上ったりキャンプやったりしてたよ」



「まあ、高校生だったから活動はほとんど夏休みぐらいだったな」



「でもまあ、楽しくやってたよ!部員は同級生の5人だけだったけど」




「5人ってことは…さっき森で見かけた赤い服の女の人がもう一人の部員さんなんですか?」












!!?










蘭の言葉に4人は顔色を変えた。








「そ、それどこで見たの?!」



「も、森の中で園子と…」



「赤い服を着てたって本当?!」



「は、はい…赤いレインコートに赤いブーツを履いてる上から下まで赤くて髪の長い女の人でした…」






凄い剣幕で問う彼らに答える蘭。





長野の別荘…赤い服を着た女…





それを聞いて、どこかで聞いたことあるような気がして、二つの単語をもとに記憶の引き出しから探す。







すると…








「嘘だ!そんなわけない!聡子が生きているわけないじゃないか!」






と、薄谷さんがテーブルに手を付き急に立ち上がった。







「あ、いや…俺は15年前の殺人犯かもっと思ったんだか…」



「!!………。」



『あ、思い出した…長野の別荘で起きた事件…』





任田さんの言葉に漸く当時のことを思い出したぽろっと独り言を言ったら、隣に座る真純ちゃんが詳しく話を聞かせてくれ、と言った。














あれは、15年前。




この近くの別の別荘で殺人事件があった。



殺害されたのはどこかの会社員で、浮気相手とお忍びでその別荘に旅行に来てた時…





包丁を持った奥さんが乗り込んできたのだ。






騒ぎを聞いて警官が駆けつけた時には、部屋は辺り一面血の海。




奥さんが着ていた白のレインコートが元の色が分からない真っ赤に染まるまで、何度も何度もご主人を刺し続けていて…




付いた字が…









赤女













「「あ、赤女!?」」



『その殺人鬼、まだ捕まっていないんですか?』



「ええ、駆けつけた警官を包丁で斬りつけて森の中に消え、今も逃亡中」



「んで、その3年後の高校の夏休み俺らがこの貸別荘に来た時に、もう一人の部員の聡子が赤女を見たっていうから、みんなで森の中を探してみようぜってことになったんだけど…」







その途中で聡子さんが逸れ暗くなっても戻って来ないため警察を呼んで捜索してもらった。



だが、見つかったのはその一週間後。



底なし沼に嵌って沈んでた泥まみれの聡子さんの遺体が発見された。





その沼には例の殺人事件で使われた包丁も落ちていて、誰もが思った。






聡子さんは森に潜んでいた赤女に追い掛け回され、沼に嵌って亡くなったのではないか、と…






変更したい文字






一通りの話を聞かされ、リビングは不安の空気となった。





「そ、その赤女を世良さんに捕まえてもらうんですか?」




「あ、ううん…それは警察の仕事でしょ。
私たち、卒業後も聡子の遺体が見つかった日に毎年ここに集まるようにしてるんだけど、一昨年あたりから奇妙な事が起き始めたのよ」







窓ガラスが割られて林檎が大量に部屋の中に転がっていたり




お湯が出ないと思えば、給湯器のタンクの中に赤いバラの花弁が詰まっていたり




玄関の扉に赤いペンキがぶっ掛けられていたこともあった。



それが原因で別荘の持ち主が赤く塗りつぶし、今の赤い玄関の扉が出来たのだ。




そして、今回は赤女。






「まあ多分、その奇妙な出来事も君たちが森の中で見た赤女も誰かの悪戯だと思うけど…

でまあ、その犯人を突き止めて欲しくて頭の切れる世良を呼ぼうとなったってわけさ」




「成程、概要は大体分かったよ。その赤女に纏わる謎を解けばいいんだな」



「いや、赤女は警察に任せて…」








任田さんの話を最後まで聞かずに真純ちゃんはよし、と言って立ち上がった。


ちょ、ちょっとお嬢さんどちらへ?







「じゃあ、ちょっと森の中探ってみるわ」



「あ、僕も!」



「ちょっとコナン君!勝手に行ったらダメでしょ!」



『真純ちゃんも、まだ最後まで依頼の話聞いてないよ!』





蘭と私の言葉も耳を貸さず二人はさっさと別荘を出て行った。



そんな二人を見て蘭は頬を膨らませ、その隣でため息をついた。


行動力があると言うか、せっかちと言うか…







その後、任田さんは一キロ離れた店に買い出しに行き、


峰岸さんは昼食の片づけと夕食の下ごしらえ、


薄谷さんはお風呂とトイレ掃除


河名さんは部屋の掃除とそれぞれに分かれた。




残された私たちも河名さんの手伝いで一緒に掃除をすることになった。











______
_____
___






「ただいま〜」





空が赤くなった時刻。



帰ってきたことを知らせる任田さんの声




自分たちが泊まる部屋にいた私も玄関へ足を運んだ。









『あ、お帰りなさい』



「あれ?一緒だったの?」







任田さんだけかと思ったら、真純ちゃんとコナン君も一緒に帰って来たそうだ。







「帰り道二人にばったり会ってな、荷物を少し持ってもらったんだ」



『それで、どうだったの?』



「森の中あちこち見て回ったけど、手がかりは何にも掴めなかったよ」



「そう…ま、その件は今日はこれくらいにして、今日の夕ご飯は私の自信作を用意してるんだから!」



「ねえ、蘭姉ちゃんたちは?」



「掃除が終わったからお風呂に入るって、今澄香と園子ちゃんとお風呂場に…」















「ちょっと何よこれ?!」



「やだ、きもっ!」



「これも誰かの悪戯?!」









風呂場の方で騒ぐ蘭たちの声を聞いて、真純ちゃんたちはすぐさま風呂場に向かった。


のは、いいが・・・・






『あ、コナン君はストップ…』






浴室に入る前に彼を止めようとしたが、その声は届かず仕舞い。

ちょいちょい、ボウヤ?自分が今行く場所が何処だか分かってる?





浴室に入った3人の目に入ったのは、真っ赤なトマトが大量に入れられた湯船だった。




3人の後に入ってきた峰岸さんもその光景に息を呑み、任田さんは何があったのか、と風呂場の外で声をかける。








「ねえ、薄谷さんは?」



「え?そういえば、食事の後から見てないけど…任田君?薄谷くん来てない?」



「いや、いねーけど…どこ行っちまったんだ?風呂とトイレの掃除してたんだよな、アイツ?」



「うん…そのはずなんだけど…」



「「『――ッ!!』」」





その会話を聞いてまさか、と思い、真純ちゃんが湯船の中を探ったら…








「「――ッ!!?」」







!!







「「きゃあああぁぁぁ!!」」








湯船で溺死させられた薄谷さんの遺体が見つかった。






ああ…やっぱり事件が起きたか。
もういいや。慣れだ、慣れ。
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