Bullet of the promise
□第六十話
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真純ちゃんが住むホテルに着いた私達。
「すごッ、このホテル50階まであるよ!」
「でも高さはうちのベルツリーには負けるわね」
当たり前です。
日本一高いところなんだから。
あれに勝てたら今頃話題ものだよ。
彼女の住む30階まで上り、真純ちゃんは近いうちに引っ越す予定だ、と話す。
エレベーターを降りた彼女たちの目にすぐに入ったのは廊下で待機している3人の男性たち。
不思議に思いながら彼らの間を通り過ぎ、一角を曲がって見えなくなったところ、園子ちゃんが話し始めた。
「何?今の感じ悪いおっさん連中…」
「このホテルに缶詰めになってる小説家の原稿を待ってるらしいよ。確か名前は…」
「火浦京伍(ひうらけいご)」
彼女たちの会話に入った男性の声に顔を向けると、一つの部屋の扉が開きスキンヘッドの男性が立っていた。
「所謂世間で言う恋愛小説家だよ」
「え?あ、私先生の本読んでます。今は“電話と海と私”にハマってて」
「ああ、それはありがとう」
軽く会話を交わし真純ちゃんの部屋へ向かう。
その後ろで火浦先生が先ほどから廊下で待機している編集者たちに料理をふるまう、と話しているのを耳にした。
部屋のテーブルに置かれたさまざまな料理に目を見張る中、彼は“一番多く食べた出版社の原稿を一番に仕上げる”と言い放った。
彼らが料理を食べている間、自分は風呂に入って構想を練る、と言って部屋の扉を開ける。
「しっかり見張っててくれよ。私がこの部屋からこっそり抜け出して悪さをしないようにね?」
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「わあ〜、いい眺め!」
一方、火浦先生と別れ、真純ちゃんの住む部屋のベランダに出て、目の前に広がる絶景にはしゃいでいた。
「あ、コナン君!」
真純ちゃんがある部屋の扉を開けようとしたコナン君に気づき、それを止めた。
「そこは寝室、色々散らかってるから入っちゃだめだよ」
「そうなの?」
「まあ、僕の脱ぎっぱなしの下着とかを見たいんなら、welcomeだけど?」
は?なんだって?
「え、遠慮しとくよ…;」
よろしい。
もしここで「うん!入る!」とかぬかしやがったら、今頃紐を括り付けてこのベランダから吊り下げてたよ。
「女子高生の下着大好き、ドスケベ小学生」と書いた紙を貼りつけて。
さーさー、いらっしゃいとしてたよ。
「ねえ、うちらも何かルームサービス取らない?さっきの小説家みたいにさ」
「お、いいな。ちょうど小腹も空いてきたことだし」
園子ちゃんの提案に皆賛成する中、コナン君は止められた部屋が気になっていた。
やっぱり下着が気になるのかな?
数分後。
頼んだルームサービスが着て、淹れた紅茶と一緒に頼んだお菓子などを食べながら皆恋バナに花を咲かせていた。
アハハッ…!
「京極さん可愛い!」
「でしょでしょ?」
「空手の達人とは思えないセリフだね」
『そんなにラーメン好きなの?』
「……(アフタヌーンティーで女子会で恋バナ…俺はここにいていんだろうか…///)」
盛り上がる話に馴染めないこの場に立った一人の男、コナン君は一人静かに紅茶を飲んでいた。
きっと気まずいのだろう。一人男の子だからね。
「友梨奈さんはどうなんですか?」
そんなコナンを見てクスクス笑っていたが、園子ちゃんの言葉に恋バナのターゲットとなった。
『……え?』
「昴さんとですよ!あれからどうなんですか?」
『〜〜〜!?///』
恋バナで昴さんの話になり、頬を染めた。
あのデートで昴さんから告白された情報はすでに一同入手済みみたいで(なんでだよ!?)、すっかり茹蛸になりかけている私にキラキラした目を向ける。
やめて、こんな目で私を見ないで!
しかし、告白されてから本当に昴さんがぐいぐいと迫って来る。
敬語なしで話すように言ったり、手を重ねてきたり、頭撫でたり、掬った髪や手などにキスしてきたり…
“好きだ”などの愛の言葉をさらりと言って来たり…
以上などの行動を急に…本当に急にしてくるため、ここ最近心臓が持たずにいる。
もう何個心臓あっても足りないくらい。
そう話す私は勿論、それを聞いていた一同も顔を染め、「頑張れ」と応援。
う〜…頑張るよ…。
「コナン君はないのか?恋バナ」
と、今度は真純ちゃんがコナン君に話を振り、ターゲット変更となった。
「昔どこかで出会った忘れられない女の子の話とかさ」
「べ、別に…ないけど…」
そう答えたコナン君に真純ちゃんは不機嫌な表情になり、答えた本人は首を傾げる。
私も首を傾げる。何故そんなに不機嫌なのだ?
「ま、こやつの場合は…どーせ歩美ちゃんにメロメロだろーけどね」
「はっ!?」
「うそ!私哀ちゃんだと思ってた!」
「ええっ!?」
「あ、そっち?」
「ねえ、どっちの子が好きなの?」
「ど、どっちって…」
蘭に問い詰められ困惑するコナン君。
彼の正体を知る私がクスクスと笑うと、それに気づいたのかコナン君は視線で助けを求める。
気づかないフリしよう←
「おっと、もう6時だよ」
「やばっ!帰って夕飯の仕度しなきゃ」
「……(チッ、逃れやがったガキンチョめ)」
真純ちゃんの言葉に何とか逃れたホッとするコナン君。よかったね。
とは反対に、それを惜しむ園子ちゃんであった。どんまい。
帰り仕度を終え、真純ちゃんの部屋から失礼しようとしたその時…
「ちょ、ちょっとお客様?!お客様、大丈夫ですか?お客様!」
下の階から響く声にコナン君と真純ちゃんと一緒に駆け出した。
誰も居なくなった廊下に残るのはコナンが放り投げたランドセルのみ。
しかし、一人暮らししているはずの真純ちゃんの部屋の扉が勝手に開き、白く細い腕がのぞいたのは誰も知らなかった。