Bullet of the promise

□第六一話
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それから2日後





友梨奈が工藤邸に行く日。




いつものように夕食を作るが、今日はやけに友梨奈がぼーっとしたり時には目を押さえている。





さらに夕食の片づけを終えた時だった。










グラッ…








「――ッ!」











大きく傾いた友梨奈の身体を慌てて支える昴。







「大丈夫ですか?」



『ええ…』






気怠そうに答える友梨奈。










「(もう限界なのだろう…)友梨奈さん、今日は泊まったほうがいいでしょう」



『いや、そういうわけには…』



「このまま帰しては危険です」



『でも…』






と、なかなか引かない友梨奈を昴は無理やり抱き上げた。







『ちょ、降ろして!』



「途中で事故を起こしかねませんから、今日はここで寝てもらいます」



『大丈夫だから降ろして!』



「暴れると落ちます」



『ぜひ!降ろしてくれるならそれでもいいです!』






昴は抵抗で暴れる友梨奈にため息をついて立ち止まると彼女の耳元に唇を寄せた。







「…あまりうるさいと、その口塞ぎますよ?」






ピタッ…







大人しくなったのをいい気に昴はそのまま2階の部屋へ。





扉を器用に開け少し入ったところにあるベッドに静かに下した。





流石のこの状況に友梨奈は警戒するが、昴はそんなことお構いなし。彼女の側に腰を下ろした。






『………。』



「そう警戒しないでください」



『こ、この状況で警戒しないのが可笑しいです!』





男女2人が二人きりで一つの屋根の下で寝る…恋愛経験の少ない自分でもその意味の一つは分かる。経験豊富な高校の友人に聞いたことあるから。





友梨奈がベッドの上で距離を取って警戒する一方、昴は毛を逆立て威嚇するネコを見ている気分。




ベッドの上に膝を乗せゆっくりその警戒する“ネコ”に近づいた。







昴が近付いては友梨奈が離れる。






シングルベッドの上では限界があるため、友梨奈は急いでそこから降りようと背を向けると肩を掴まれ逆戻りした。




視界が反転して見えたのは天井と昴の顔。




逃げられないと思い覚悟のうえで目をギュッと瞑り身構えたが、昴が動く気配は感じるのに一向に何もしてこない。




恐る恐る目を開けると彼は最初と同じようにベッドに腰かけ自分を見ているだけだった。







「女性を無理やり手に入れようとする不粋なまねはしませんよ」





と、友梨奈の髪を軽く撫でると立ち上がり、部屋の扉の方へ向かった。






「私は隣の部屋にいますので、何かあったら言ってください」





と言って部屋を出ていった。





どうやら泊まる事は決定事項らしい。





流石に悪いことしたな、と思う友梨奈だったがここ何ヶ月もちゃんとした睡眠がとれていないせいから正直体がとても重く、帰るまでの体力がない。



せめてメイクは取ろうと、一階に下り洗面台を借りたら再びベッドに寝転がりそのまま目を閉じた。
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