Bullet of the promise

□第六一話
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友梨奈に言った通り彼女が寝る部屋の隣で本を読む昴は時々彼女を気にしていた。




あれから3時間経過。



今のところ大丈夫そうだ。





と、安心している時だった。








『いやあああぁぁ!』



「――ッ!!」








悲鳴を聞いて駆けつけると、友梨奈はすでに起き上がっており、胸に手を当ていた。


呼吸も荒く、額には大量の汗。







「友梨奈さ…」



『死神が…』






昴の声が聞こえないのか、友梨奈はぽつりと呟く。






『私のせいで…私のせいでまた…ッ』





顔を覆い肩を震わせる友梨奈の側に腰を下ろし、彼女を抱き寄せる。




子供をあやすように背中を優しく叩くうちに漸く冷静を取り戻した。





汗で服が濡れているため自分のシャツを貸し、着替えさせるために部屋を出た昴。



数分後。


冷蔵庫のペットボトルのミネラルウォーターを片手に再び戻るとベッドの窓側に座る友梨奈の隣に腰を掛けた。






『ごめんなさい、起こしてしまって…』





昴に渡された水を飲み落ち着いた友梨奈はぽつり、と昴に謝罪した。






「いえ、まだ起きてましたから大丈夫です」



『でも、迷惑をかけてしまった…』






手元にあるペットボトルに残って揺れる水を見つめる友梨奈。



昴は俯いて友梨奈の顔を隠す髪を耳にかけさせ彼女の表情が見えるようにする。


そのまま下におろし、一回り小さい手と重ねた。





「僕が勝手にしたことだ。迷惑なんて思っていません。それに…





惚れた女性のこんな状態に放っておけるわけありませんから」








昴は水を友梨奈の手の中からサイドテーブルに移動させ、ゆっくり友梨奈を寝かせるとその隣に自分も横になり、器用に彼女の頭の下に腕を入れた。



もう抵抗する気力がないのか、友梨奈も彼のされるがまま。





「まだ夜は長い。もう少し寝ましょう」



『…ここで?でも、起こしてしまうかも…』




心配そうに言う友梨奈に昴は大丈夫だと応え空いた手で彼女の顔にかかった髪を優しく流し退かす。


そして、そのまま頭を撫でると気持ちよさそうに目を細める友梨奈。







『……(同じだ…)』





あの旅行の時撫でてくれた葵の手は、冷たくてとても心地よかった。



それと同じ感覚に数年前の記憶が蘇る。








『…昴さん、もっとそっちへ行っていい?』



「…ええ、構いませんよ」







昴の了承を得て友梨奈は自分と彼の間にあった空間を埋めた。









「友梨奈さん、もう少しこっちに来て。そう…体の力を抜いて、僕の胸に耳を当ててみてよ」







耳の奥に聞こえる懐かしい声に従い、友梨奈は昴の胸に耳を当てた。








トクンッ…











トクンッ…












トクンッ…














「人にとって心音ってとても落ち着くんだって…」










(うん…ホントだね…)










とても落ち着く…








友梨奈の体の力が抜けたことを感じた昴はそのまま頭を撫で続けた。










「大丈夫だ、おやすみ」




「大丈夫だよ、おやすみなさい」








『…おやすみ、なさい…』







ついに、上瞼と下瞼が仲良しになり友梨奈の意識は深く沈んだ。




懐かしく感じる温もりに友梨奈の閉じられた目から流れる涙を昴はそっと拭った。
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