Bullet of the promise
□第六四話
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「キャメル!大丈夫だった?」
コナンたちと共にキャメルのもとへ駆け寄るジョディに彼女を探していたキャメルは顔を向けた。
「あ、ジョディさん!大丈夫って何がです?」
「組織の一員の安室って男よ!彼の車がこの病院から走り去るのを見えたから…彼の口車に乗って機密情報を漏らしたりしてないでしょうね?」
「え、ええ…――っていうかそれ、さっきも言ってましたよね?」
だが、ジョディにたった今親友、澁谷先生の病室から戻ってきたばかりだと言われ、キャメルはさっき見たジョディは何だったのかと困惑する。
その会話を聞いてコナンの脳裏に浮かぶのは一人の人物。
「…(知人をだませる程の声色と変装術…それを兼ね備えた女は…たった一人しかいねぇ!)」
病院から少し離れた場所に佇む女性。
目の前に停まった車の助手席に乗り込んだ。
「意外に遅かったですね…来てくれないんじゃないかとヒヤヒヤしました…」
「彼女のスカーフに似た柄がなかなか売ってなくて…」
「なるほど…で?首尾は?」
安室と会話しながら“ジョディ”は眼鏡を外す。
「楠田って男…あなたが予想していた通り…」
顎下に手をかけ…
「拳銃自殺したそうよ…自分の車の中でね…」
剥がした“マスク”の下からベルモットの顔が現れた。
その情報を聞いて、安室はやはりそういう事か…、と呟いた。
「べ、ベルモット!?さっきジョディさんがベルモットの変装だっていうのか?」
「うん!」
『バーボンに何か聞かれなかった?』
「ああ…でも奴には何も答えてはいないよ…私のような下っ端捜査官には情報が降りてこないとか揺さぶって来てはいたが…」
「そうやってあおってプレッシャーをかけて…仲間のジョディ先生が現れたら気が緩んで口が軽くなる…その心理を利用されたんだよ!」
「ちょ、ちょっと待って!ベルモットは私達がこの病院に来る事を知ってて待ち伏せてたってわけ?」
「ああ…全てバーボンの思惑通りに動いちまったんだ…」
事の発端はジョディが澁谷先生から受け取ったメール。
彼らの策略そこから始まっていた。
澁谷先生はそんなメール出した覚えないと言っていたが、恐らくそのメールはバーボンが澁谷先生の携帯から送信したもの。
FBIであるジョディの携帯を奪るのは厳しいが、ただの小学校教師ならこっそり携帯をくすねることは容易にできるし、澁谷先生に探偵として雇われていて、何度も会っていたとしたらその機会は十分にある。
「でも何でそうまでしてあんなメールを…」
「ジョディ先生が澁谷先生に電話を掛けるように仕向ける為さ!キャメル捜査官に携帯を借りてね!」
「え?」
『お酒を飲む約束なら時間は夜…そのころになるとジョディさんの携帯が電池切れするってことを知ってた…見張られていたってことね…』
「し、しかし何で私の携帯を…」
「FBIの捜査官なら誰でもよかったんだ!」
あの夜、澁谷先生が事故とかに巻き込まれれば履歴が残っている捜査官もジョディと共に現場へ呼び出される。
つまり、情報を聞き出すターゲットは最初からジョディと一緒に来る捜査官。
あの夜、澁谷先生は神立さんに公園の階段から突き落とされて大けがを負ったが、もしもあの事件が起きなかった場合、車で轢いて大怪我させる気だったのだろう。バーボンは車に乗っていたと言っていた。
「どういう方法にとったにせよ、屋外で事故に遭わせる計画だったと思うよ!」
「屋外で?」
『ジョディさんの服装を確認させるためね。顔は今まで撮った写真があるけど、今日着ている服を知る必要があった』
車内や屋内より屋外に来させた方が全身の隠し撮りもしやすい。
そして、準備が整えば澁谷先生の容体が急変したと偽りの電話で病院に誘き出し、キャメルの気を引いて2人を離れるように仕向け…
「私に変装したベルモットがまんまとあなたから情報を聞き出したってわけね…」
「す、すみません…」
「でもコナン君…どこからそれに気づいたの?」
「病院から電話があった時に…事件に関わる患者なら警察に話す事もあるけど、患者の容体は親族にしか直接話しちゃいけないから…」
「じゃあ、どうして教えてくれなかったの?」
「まだ半信半疑だったんだ…澁谷先生に化けている可能性も残ってたし…」
ジョディは彼らに何の情報を漏らしたのかキャメルに尋ねると、この杯戸中央病院に潜入していた楠田陸道の事だと答えた。
「自分の車の中で…拳銃自殺したって…」
「それだけ?」
「え、ええ…この病院へ来る途中の車の中でコナン君に念を押されたのでついその事を…」
しかし、そんな情報を入手して彼らに何のメリットがあるだろうか…
キャメルはFBIに捕らえられていると思っていた楠田が死んでいたのなら、口を割らされる恐れがなくなったのだろう、と考えを言う。
「それとも何か別の意味があるのかしら?ね、コナン君…コ、コナン君!?」
「………。」
疑問を持つジョディとは反対に、少年は冷や汗をかき、ひどく動揺していた…
『………。』
そして、そんな少年の様子を見た彼女も少し焦りを感じた。