Bullet of the promise

□第六五話
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闇に包まれた来葉峠。





そのカーブが続く道路上で数台の車のライトが蛇のように波を描く。






「あのボウヤって…まさかコナン君?」



「ああ。俺の身柄を抵抗なしで確保するには、俺と繋がりが深い友梨奈は勿論、お前たちのどちらかを拘束するはず」







赤井は手袋を左手に付けながら続ける。






「人知れずそれを実行するにはFBIの仲間から離れる車での外出中。俺の死に不信感を持ち始めていた友梨奈やジョディなら恐らく、この来葉峠に来ると的中させていたよ」




「友梨奈も?でも私がここ(来葉峠)に行くと誘ったら友梨奈は用事があるって電話で…」



「その電話はベルモットだ。友梨奈はすでに奴らの仲間のもとにいる」







その情報にキャメルもジョディも驚きの声を上げた。






「アイツはお前たちが来る前にすでにこの来葉峠に来ており、その時に奴らに捕まったのだろう。その証拠に昨夜アイツからのメールが来て以降、音沙汰無しだ」




「メールって…友梨奈は知ってたの?シュウのこと…」




「いや、正確には俺が変装していた沖矢昴にだ。奴らも友梨奈が俺のことを知っていると思い捕らえたが、アイツは何をするか分からない。

だからお前たちも捕らえに来たんだ。代わりは多い方が何かあったときに役に立つからな」






赤井は懐から拳銃を取り出し弾の確認した。






「キャメル。次の右カーブを抜けたら200mのストレートだ」




「了解!右カーブを抜けたら5秒間、ハンドルと速度を固定します!」




「無茶よ!タイヤのエア漏れで車が揺れているのに拳銃の照準を定めるなんて…」









ギシッ…






「問題ない」







赤井は後部座席に足を乗せ運転席の背に体を預けると、乗せた足の膝の上で拳銃を固定して構えた。






「規則的な振動なら計算できる…」







ガタンガタンと揺れる車に気にせず、彼は片目を瞑り狙い定める。






目的のストレートに入り、キャメルはカウントを始めた。






前方のガードレールに迫り、ぶつかる!、と漏らしたジョディの声。





“5”とカウントが入る前に発砲音が鳴り、その直後車のクラッシュした音と衝撃音が聞こえた。





赤井が発砲した弾は先頭を走る車のタイヤへ撃たれ、クラッシュした車に後方から次々とぶつかり走行不能となったのだ。









発砲直後キャメルはすぐにハンドルを切って少々ぶつけながらも衝撃を避ける。






「追ってこないって事は振り切ったようね…」



「流石赤井さん!」








2人が安心する一方、赤井は…





「キャメル…戻れ…」





と指示した。




それに驚くジョディと、従うキャメル。



3人を乗せた車はすぐさまUターンして戻った。















「何!?赤井が拳銃を発砲!?それで追跡は?」



≪それが、走行不能車の続出で…≫




「何でもいい!動ける車があるなら奴を追え!今逃したら今度はどこに雲隠れするか…」









苛立っているのか、声を上げて指示する安室の後ろから咳払いが一つ聞こえた。







「少々静かにしてもらえますか?今この家の家主が大変な賞を授賞してスピーチをする所なんですから…」







昴は後ろのテレビに顔を向けながら注意をした。





「会った事はありませんけどね…」








≪どーも…ただ今紹介して頂いた工藤優作です≫









歓声が広がる中壇上に立つ男性は、自己紹介からスピーチを始めた。








≪今回、私ごときがこのような賞を獲得できたのは、この新人脚本家のシナリオを見事に映像化された監督、スタッフ、俳優の方々のお陰だと思っております≫








友梨奈の逃走や赤井秀一の登場でパニックになっている男たち。





その一方、彼らの手から抜け出した友梨奈は…
















ハァ…






ハァ…








重い身体に鞭を打ちながら周りに誰もいないことを確認し、“ある部屋”の扉を開ける。














≪そして忘れてならないのが、この“緋色の捜査官”のモデルとなった彼…≫












中から扉をしっかり閉じると、部屋の端に敷かれた布団最後の力を振り絞って向かう。









≪ほぉー、モデルがいるんですか?≫



≪ええ…困った事に今、妻がその彼に夢中でして…≫










最近洗ったような真っ白なシーツにふんわりとした布団。










≪イケメンで礼儀正しくてクールでダンディーで…もォ〜、FBIに置いとくにはもったいないくらーい♡≫








糸が切れたようにその布団に倒れ込み、そのまま意識を手放した。




















≪――っと妻は申しておりました≫





テレビの中で笑いの声が溢れる。






そんな幼馴染の父親を見て、蘭は目をパチパチと瞬きをする。





「何か新一のお父さん、可愛い…」





初めて見る一面に蘭はそう呟いた。
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