Bullet of the promise

□第六六話
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ジョディとキャメルをそれぞれのマンションに送り、赤井は劉と友梨奈を連れて工藤邸に戻ってきた。





顔が赤く、汗をぐっしょり掻き息も少し荒い。



そんな友梨奈をベッドに寝かせ、熱冷まシートを額に貼る。







友梨奈が見つかったのは安室の仲間から離れ来葉峠を抜けた2時間後だった。






















ピンポーンッ…






「!!」



「………。」





来客の知らせに劉と晴香は緊張する。




もしかして、友梨奈の予想通りの彼らなのか…



窓から覗くと、家の前には3人の人影と一台の車。




晴香を寝室で待つように言って、劉がインターホンの受話器を取る。



画面にはニット帽を被った見知らぬ男。









「……はい」



≪星宮友梨奈に頼まれた者だ≫





昨夜友梨奈が言っていた“彼”…





劉は警戒を止めることなく続ける。










「…合言葉は?本当に友梨奈が頼んだ人物なら、知っているはずだ」



≪………。≫






画面の彼は一時目を閉じる。



偽物なのかとヒヤヒヤする劉だが、彼は口を開いた。







≪合言葉は……ない≫






受話器の先から驚く男女の声。



カメラ画面越しに緊張が続くが、劉は息を一つ吐くと…







「…今開ける」





と言って受話器を置いた。








「別の合言葉…?」



『そう…これね』






[合言葉は…ありません]














「……成程な…」





赤井たちをリビングへ上げた劉は彼らの大まかな話を聞いて呟いた。




今向き合っている赤井が沖矢昴だという事、警戒していた者たちは退散した事…



そして、友梨奈の行方が分からない事…









「それで俺のもとへ来たのか」



「ああ。お前なら友梨奈の行先に見当がつくと思ってな」







沖矢昴で面識があるため、2人は崩した口調で会話を交わす。



少し考える劉の側でリビングへ下り彼らに紅茶を出す晴香は婚約者の横顔を心配そうに見つめる。





ふと、劉は顔を上げ赤井たちをまっすぐ見た。







「……お前たちの事、信じていいんだな?」



「ああ…勿論」






強く頷く彼らを確認すると、劉は立ち上がる。








「タイヤがエア漏れしているんだろ?俺の車を出す。
そっちの車は車庫に入れてくれ。知り合いの腕のいい修理屋を呼ぶから明日にでも取りに来ればいいだろ」



「あ、はい…ありがとうございます」








淡々と話す劉にキャメルはどこか赤井に似ていると感じ、つい従ってしまった。




キャメルが車庫に車を回している間、劉は出かける仕度を始める。




貴重品は勿論だが何故か薬や水、タオル、救急セットまで大きなバッグに詰めていく。





晴香も友梨奈が心配でついて行こうとしたが彼に止められ、渋々自宅で待つことに。





劉は晴香に車の修理屋に連絡するよう伝え、赤井たちと共に友梨奈を捜しに行った。













「それで…一体どこに向かってるの?」





後部座席に座るジョディは運転席の劉に尋ねた。





「昔、俺と友梨奈が見つけた隠れ家。まあ、家と言っても子供が言う“秘密基地”みたいなところだ」




「そこに星宮さんがいる可能性は?」



「ほぼ100%に近い。FBIに入る前でも友梨奈は日本警察の警視庁捜査一課警部の娘。万が一何か遭った時の避難所として置いている場所だ」



「け、警部の娘!?」






初めて聞く友梨奈の身元にジョディは驚愕した。







「キャメル、知ってたの?」




「え、ええ。前に事件に巻き込まれた時、来た警部さんの話を少し聞いてまして…

“自分の上司だった”っと…」




「目暮警部か。懐かしいな…。
確かに彼は、友梨奈の父親の部下だった。当時刑事なりたてだった毛利さんもな」




「しかし、星宮さんに幼馴染がいることは今日初めて知りました…」






ルームミラー越しに驚く彼らを見た劉はああ…、と声を漏らした。





「俺たちのことを話さなかったのは公になって俺たちが人質になるのを避けたかったんだ。
アイツがFBIに入る前もそうするために俺たちから距離を離そうとしてたぐらいだ。









結局、俺たちの我がままでアイツから離れなかったがな…」




















そうこう車を走らせると、一つの建物にたどり着いた。






「…見た感じただの古い倉庫ね…」



「こんなところに星宮さんがいるのでしょうか…」





少々疑い気味の2人。



赤井は倉庫に誰も近づけさせないように2人に待機を指示すると、自分は劉と共に倉庫へ入って行った。










倉庫の中は床が大きな正方形のタイルで壁には外見と相応してところどころシミや穴が開いていた。




目だけで辺りを見渡しながら赤井は劉の後を続く。





彼は迷いなく奥へ行くがその先は壁のはず。



だが、床を調べある場所をスライドすると、何かをはめ込むような型とアルファベットのボタンが幾つか現れた。







「…友梨奈のペンダント…」






劉が懐から取り出したのは、友梨奈がいつも首から下げているペンダント。





「ああ。安全が確認された時、お前に渡してくれと預かっていたんだ。

もう一つ、隠し入り口があるから、アイツはそこから入ったのだろう」








劉はペンダントを型にはめ、軽く押しこむ。





次にアルファベットをいくつか押すと…







カチッ





何処からか鍵が解除された音が倉庫内に響いた。






更に、そのスイッチのすぐ隣のタイルに手を掛け軽々とそれを外すと…





そこには梯子があり、地下へ続いていた。











地下に下りた2人。





さらに長く続く廊下を歩き続ける。






「こんな所があるとは…」



「元は30年以上前に捕まった強盗グループの引っ越す前の住処だったみたいだが、20年前に俺たちが見つけ、阿笠博士に少し改造してもらったんだ」





アルファベットは元々あったものだが、もう一つのペンダントを埋め込む仕組みを13年前、阿笠博士に取り付けてもらったと言う。







暫く歩いていると奥に一つの部屋があった。




その部屋の前にもセキュリティーがあり、これも博士が取り付けてもらったそうだ。




登録した者の指紋でしか開けられないシステム。




劉もその一人であり、彼は指紋認識に指をあてるとロックが解除された。





部屋の中はこまめに掃除しているためか全くと言っていいほど埃がなく、その部屋の隅で横になる人影があった。










その後、倉庫の地下室から友梨奈を抱えて車の中で待機していたジョディたちと合流した赤井と劉。




赤井の腕の中でぐったりとする友梨奈を自宅に着く最後まで心配をするジョディたち。



そんな彼らを見て劉は多くの人から愛されている幼馴染に密かに安堵し、兄のような眼差しを眠る彼女へルームミラー越しに送った。
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