Bullet of the promise

□第六六話
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そして、今に至る。







友梨奈が眠る部屋には彼女の容体を診る劉




付き添うで壁に背を預ける赤井、




心配して部屋に入ってきた優作とコナン。





兎に角現在工藤邸にいる者全員がその部屋にいた。








ピピピッ…






「…39度」






なり出した体温計に表示された数字を読む劉。









「ま、いつものことか」







(((いつもの事…)))






サラッと言う劉の言葉に3人は内心で突っ込んだ。





「え、本当に友梨奈姉ちゃん大丈夫なの?」




「ああ。うつ熱と言って熱が体内にこもって体温が上昇したもので、友梨奈は昔からこの時期になるとよく出るんだ。」







劉にとっては慣れたもの。


用意してもらった氷水でタオルを濡らし、友梨奈の身体のところどころを冷やしていく。






「まあ、久々なうえに、今回は疲れも出ているんだろう」



「じゃあ、普通の発熱の時と同じ対処でいいんだね?」



「はい。心配しなくても明日か明後日には熱は下がりますよ」








劉の言葉にホッとし、優作はホテルにコナンは阿笠邸へ。



工藤邸内は眠る友梨奈と劉と赤井のみとなった。







「友梨奈の着替えはあるか?最近ここで寝泊まりしているんだろ?」



「いや、着替えは自宅に持って帰っていたし風呂も自宅で済ませていたからここにはない」



「じゃあ、お前の貸してもらっていいか?それと悪いが氷水を換えてくれ」



「分かった」





劉の頼みで赤井は部屋を出て行った。

















「…行ったぞ」






シャツを受け取り、赤井の足音が遠くなったのを確認した劉はため息を一つ吐くとベッドの方へ顔を向けた。




彼の声にベッドの彼女は静かに目を開けた。




熱のせいでぼーっと天井を見つめる友梨奈。





『…気づいてたの?』



「工藤さんたちが出て行った時からな」



『結構自信あったのに…」



「前にも言っただろ、周りが分からなくても分かるって」






赤井から受け取ったシャツを渡しながら言うと、友梨奈は彼に背中を向け汗を含んだ服から着替えた。




背中の傷を見せられるのは信頼できる劉と晴香、治療をした劉の両親のみ。



元恋人であった一葵も信頼できる人物であるが、体を重ねたりと恋人らしいことは一度もなかったため、傷が見られる事がなかった。





赤井を部屋から出したのは、着替えの際友梨奈の傷を見せないためともう一つ…







「あの男の事気づいてたんだろ?」



『…少し前から』





彼の問いに何がとは聞かなくても分かった。




友梨奈はシャツのすべてのボタンを留め再び横になっても劉に背中を向けたまま答えた。






「彼のあの様子では聞かなかったんだな。昴の正体の事」



『ちゃんとした証拠がないとあの人…赤井さんは上手いこと誤魔化すだろうと思ったの。
私の勘違いで都合のいい推測に付き合ってもらう事になって…恥をかきたくなかったし…」



「本当にそうなのか?」






自分を見ない幼馴染に劉は眉を顰め、少し厳しい声で名を呼んだ。







「お前…あの男の事、好きなんだろ?」



『………。』



「誤魔化そうとしても無駄だ。お前が彼に向けるのは、葵に向けていた家族のようなものではない。明らかに好意を持っているものだ。


何故そこまでして自分の気持ちを隠す必要がある?」





『…2年前、あの人が私に伝えてくれた気持ちは嬉しかった。
でも、その時の私はまだ葵さんと仕事の事しか考えられなかった…』



「………。」






少しずつ、葵くんとは違う気持ちが、あの人に惹かれていってそろそろ返事をしようと思っていた。


けど、明美が亡くなって彼が明美の元恋人と知った時、それが出来なくなった。






彼が本当に愛しているのは、明美なのではないのか…



もしかして、自分の中で開いた穴を他の女(ヒト)で埋めようとしているのではないのか…



もしそうなら、彼女の代わりを私ができるわけない






そんな気持ちが一気に生まれ、結局、返事をすることなく2年が過ぎた。









『そんな私が今更告っても、もうあの人の中で別の人がいる。

だから、私は葵さんを探す事だけ考えればいい。


やるべき事を終わらせる事だけを考えていれば、それで…』






友梨奈はそう否定するが、劉はハッキリ言った。







「卑怯者」






と。







友梨奈は衝撃を受けて開いた唇をぐっと閉め、シーツを握りしめた。








「そう言っているが、自分が傷つくのが怖いだけだろ。気持ちや相手から逃げる理由に他人を使うな」



『――ッ…』








本当のことを言われ、言葉が見つからない。


髪からの感触にまるで親に怒られた後の子供のようにきゅっと身を固めた。





劉はそんな彼女に気にすることなくそのまま撫でる。







「葵も明美っていう彼女も…そして彼もお前を苦しめる為に好きになったわけじゃないだろう?」



『………。』



「友梨奈。お前と付き合っていた男は、お前を救った彼女は…自分以外の男を、自分と同じ男を好きになったお前を恨むような奴なのか?」









友梨奈はそう問われ目を見開いた。





彼らはそんな人じゃない。



そんな簡単な事も分からなくなった自分は本当にバカだ…




そう思っているうちに視界がぼやけてくる。









「逃げるな」









劉は予備で置いていたタオルで浮き出る汗を拭い言った。






「結局いつかは自分に戻ってくるんだ。いい加減、逃げるのを止めて自分の檻から出て来たらどうだ

お前の世界は、そんな小さなものじゃないだろ?」






元々熱で重い体と優しく拭われる感覚に友梨奈の瞼はもう一度を青紫色の瞳を隠した。
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