Bullet of the promise
□第六九話
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「「『おいしーーー!!』」」
晴香からホテルのケーキバイキングに誘われ、鈴ちゃんと一緒に来ていた。
お皿の上にはチョコケーキやらストロベリーケーキやら、ロールケーキなどなど…
一緒に一口に食べて一緒に感動。
これに紅茶も飲んで…最高だ。幸せだ。
「おかわりに行こー?」
「晴香ちゃん、もう食べたの?」
『別にケーキは逃げないから、ゆっくりしていいんじゃない?
むしろ今行ったら誰かにぶつかるんじゃ…』
多種類のケーキが並ぶテーブルには他のお客さんでいっぱい。
晴香は「へーきへーき!」と言って皿を持って行く気満々。
そのおNewであるケーキの絵がプリントされたワンピースに本当のクリームがついても知らぬぞ。
「晴香ちゃんをお願いします」と、礼儀正しい鈴ちゃんに荷物番任せて、お皿を持ってずんずん進む晴香に続く。
落ち着け。
ため息が一つ漏れる。
「あ、見て見て友梨奈!!このケーキも美味しそう!」
ちょ、本当に落ち着きなよ。誰かにぶつかったら…
「――――あっ!」
「うわッ!」
ほら言わんこっちゃない。
誰かにぶつかってよろけた晴香を受け止める。
相手の方は大丈夫なのか、と顔を向ければどこかで見たことのある可愛いつむじ。
「う〜…ご、ごめんなさい」
「ううん。僕こそごめんなさい」
顔を見合わせるために上げた顔は絶対に間違えることのない人物。
『あら、コナン君』
「友梨奈姉ちゃん!?何で?」
「友梨奈知り合い?」
はい。「知り合い」という範囲には決して入らないほど深く、深ーく関わっている人物です。
『彼女に誘われてね。それより大丈夫?怪我はない?』
「うん。大丈夫」
「ねえねえ、友梨奈!誰よ、この子?まさか隠し子?」
『誰のだよ。この子は知り合いの親戚である江戸川コナン君。
コナン君。彼女は劉の婚約者の近藤晴香』
「ぶつかっちゃってごめんなさい。よろしくね、コナン君」
「うん、よろしく。晴香姉ちゃん」
コナン君の「晴香姉ちゃん」がうれしいのか、彼女はバシバシと私の肩を叩いてくる。
痛いんですが。
「ああ!!友梨奈お姉さんだ!!」
可愛らしい声と共にこちらへ駆け寄ってくる少年探偵団と博士と哀ちゃん。
コナン君と一緒に彼らも来たみたいだ。
しかし…、またなんか事件が怒りそうな
メンバーだな…(遠い目)
私達が座っていたテーブルの隣がちょうど6人席で彼らが入る。
荷物番を頼んでいた鈴ちゃんのもとへ抹茶のロールケーキをお土産に戻る。
コナン君たち少年探偵団+博士たちは隣のテーブルへ。
鈴と晴香、そして彼らを紹介をし終えたら子供達、特に元太君はパクパクとケーキを口に入れた。
相変わらず、元太君は見た目通りよくお食べになります。
博士は哀ちゃんに減らされお皿の上のケーキはたったの二つ。
ケーキバイキングでも手加減しないな…。
羨ましそうに元太君の皿の山盛りのケーキを見つめる博士が可哀そうに思えて来た。
「元太君、もっとゆっくり食べた方がいいよ!」
「でもよー…早くしねぇとなくなっちまうじゃんよ!」
まだ食べるのですか。
あーん…と大きく開けた元太君の口に入ろうとするモンブランに何かが飛んで追突してきた。
「何だコレ?ヘリコプター?」
「ああ!今流行ってるプチファルコンですね!」
「でも、一体何処から飛んできたの
かしら?」
「ごめんなさい!」
帽子を被った若い女性が元太君たちのテーブルに来た。
あれ?あの顔どこかで…
「ボウヤ怪我なかった?」
「あ、おう!」
オモチャの持ち主である彼女はさっきホテル前のトイショップで買ったのだが、
スイッチ入れたらあらぬ方向に飛んでしまったという。
その前に、食べ物が置いてある場所で飛ばすなよ…
大人としてどうなのだ、と思う私は冷めているのだろうか。
「あれって、もしかしてタレントの北見沙弥さんじゃない?」
ミーハーな晴香を始め、子供達がそれに気づいて彼女に問う。
どうやら「ゴメラ」に出てた人だそうだ。
血を吸う怪獣ってどんな怪獣だ…吸血鬼?
「しーっ!大きな声で言わないで…
私がこのホテルに泊まってるの内緒だから…
代わりのケーキを取って来た後で、一緒に写真撮ってあげるから」
「やったぁー!」
「あ、じゃあ私も私も!」
『おい……』
喜ぶ歩美ちゃんにちゃっかり仲間に入る晴香。
千切れるんじゃないかと思うほどぶんぶん振ってる犬の尻尾が見える。
劉よ。君の彼女用のリードはないかのぉ?
「相変わらずあざといわね…
そうやって態と仲良くなった子供達との写真をブログにアップして、ブログの人気ランキングの上位を上げる算段ね…」
また新しい人が出た…。
今度来たのは、
帽子にサングラスして堂々と立つ女性と、その後ろでこちらの様子を見るように覗き込む女性。
「タイトルはそう…「ケーキバイキングで知り合った子供達と一緒に」ってところかしら?」
「そ、そんなつもりないですけど…」
なーんか、あまり仲のいい関係ではなさそうだな…。
ズズズ…、と彼女たちを見ながら紅茶を飲む。美味しいッ。
「ちょ、ちょちょちょ!あの人多分庄野杏奈だよ!」
「ああ…北見沙弥と仲悪いっていう…」
「そうそう。番組の企画でブログの順位を争ってた…」
「負けた方が丸坊主になるって聞いたことがあります」
『丸坊主か…芸能人は大変ね』
と、また紅茶をズズズ…。
「まぁ、勝つのは私に決まってるけどね…」
「それはまだ分かんないかとー…」
「あら…、あなた、私のブログ見てないの?
私、知ってるのよ…あなたのひ・み・つ…」
庄野さんのその言葉に北見さんの表情が変わった。
「それを公表させたくなかったら、早めに白旗を揚げるのね…元々あなたショートヘアーなんだから丸坊主ぐらいわけないでしょ?」
いえいえ、お姉さん?
ショートヘアーと丸坊主は全く違いますからね。
その後、庄野さんは北見さんとブログのネタかぶりするのは嫌だ、と部屋に戻った。
「あれ?もしかして桜子さん?」
「こ、コナン君!?」
どうやら庄野さんと一緒にいた彼女と知り合いらしい。
まさかこの事件ホイホイに呼ばれてやって来た事件に関わった事のある人物だったりして…
「何してるの?桜子さんって家政婦さんだったよね?」
「彼女のマネージャーが風邪ひいちゃって…
それが治るまでの間だけ身の回りのお世話をする依頼がうちの紹介所に来てそれを受けたのよ…」
しかし、何故仲悪そうな二人が同じホテルに泊まっているのか。
それを聞くと桜子さんは、春からこのホテルを舞台にした連ドラが始まり、あの二人はダブルヒロインだそうだ。
哀ちゃんも知っているそうだが、内容がなかなかだ。
お嬢さん、お顔が怖いですよ。
「じゃあ、私買い物してこなきゃいけないから…」
「あ、あの…それを彼女に届けた後、504号室の私の部屋に来てくれます?
彼女の事で話しておきたい事があるから…」
「あ、はい…」
「じゃあ後で」とバイキングを出て行った。
そんな桜子さんの背中を見ていた北見さんの顔に何か感じた。
当たりそうな、嫌な予感が……ね?