Bullet of the promise

□第七十話
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バイクを工藤邸に置いて、徒歩で毛利探偵事務所に来た私と哀ちゃん。



事務所の開いている扉から小五郎さんの嘆く声が漏れていた。







「落ち込む前に調べて確かめてみれば?浮気調査とかよくやってるじゃない!」




「バカ野郎!探偵は自分の興味本位でそんな調査しねぇんだよ!それが俺のポリシーだ!!」




「じゃあ、依頼したら調べてくれるのかしら?」







私の前で堂々と事務所の扉をノックして自分の方へ視線を向けさせる哀ちゃん。




私たちの登場に驚く蘭たちに、こんにちはとペコリ。








「比護隆佑と沖野ヨーコの素行調査…依頼するわ!勿論無償で!」




「………。」






見つめ合う哀ちゃんと小五郎さん。







何か頷き合うから、とりあえず、私はスマホを取り出して…








「よーし!引き受けた!」





ガシッ!








ジャーンッジャンッジャーンッジャンッ♪





握手を交わし絆が芽生えた二人に似合うBGMを流した。




反沖野×比護同盟が組まれた瞬間だった。








「……何コレ?」






素晴らしい絆の始まりです。












しかし、一般人と違って住所などが分からない二人をどうやって調べるか悩んでいるところ、小五郎さんは「バーカ」とパソコンを開いた。









こういう時は大抵無難なコメントを出すはずだが、それができないという事は、二人とも噂になっていることに気づかずに今日も二人で会っている可能性がある。




普通は携帯にメールや電話がかかって来るはずだが、沖野さんも比護さんも携帯の電池が切れていることに気づかない事がよくあったり、プライベートでは携帯の電源を切っていたりしているそう。




流石っいうか…詳しいね、二人とも。





パソコンで「沖野ヨーコ」「比護隆佑」「デート」の単語と今日の日付を検索してみれば、すぐに情報が出た。



杯戸町のレストランで2人を見たという人がブログにアップしている。







「で、でも2人で男物の腕時計を買ってただけでしょ?

もしかしたらヨーコちゃんの弟さんとかのプレゼントを比護さんに選んでもらって…そのお礼にヨーコちゃんが食事に誘ったのかも…」




「ヨーコちゃんに弟はいねぇよ…」




「――っていうか何でわざわざ比護さんに選ばせるの?意味わかんないわ!」




「だ、だよね…」








大好きな彼らの事で随分ピリピリしてるな…








「じゃあやっぱ付き合ってるんじゃない?あの2人♡」






で、ここで爆弾を落とす蘭。



ああ…二人の眉が下がっていく…。






とりあえずそのレストランに行ってみればいいのだが、店名が書かれていない。

それじゃあ、行けないな…。





「そーいえば、比護さんの高校のサッカー部の先輩がJリーガーを引退して杯戸町にイタリアンレストランを出したって聞いたけど…」





「「その店どこ!?」」





おお…息ぴったり。





でも、そこに2人がいるかどうかは…



































いるね、2人とも…






杯戸町にある「Aska」というイタリアンレストランに2人ともいた。







「しかしまあ…この2人の入れ込みようを見れば…蘭がパスるのも無理ねぇか…

友梨奈姉も来てていいのか?」ヒソッ




『昴さんなら大丈夫よ。ちゃんと連絡してるし。私もなんだかんだで気になるし』




「って、おめーは何メモってんだ?」




「あのアイドル女が比護さんに微笑んだ回数よ…」








すごっ…今まで数えてたんだ…





「お、オメー沖野ヨーコの曲を気に入って何度も聞いてなかったか?」




「さっき全てデリートしたわ…」








女ってホントに怖いね…。






「んで?あのサッカー野郎の先輩っていうのはあの男か?」




「え?」






視線の先は沖野ヨーコさんたちが座るテーブルにワインを出していた男性。



何でも、比護さんの先輩は飛鳥悌耶さんっていう東京スピリッツのサイドバックで日本代表にも選ばれたことがある人。

海外に移籍した年に大怪我して若いうちに引退したけど…。







「あの人はソムリエなんじゃないかなぁ?」



「あの野郎…ヨーコちゃんを酔わせてどうするつもりだ?」






メニューを強く握り彼らを睨む小五郎さん。



ソムリエさんはワインのコルクを抜くとテーブルに置き、ワインを注いだ。





何か比護さんと会話を交わすと、次はデザートを持ったウエイトレスさんが近付いた。





カンッ…





「わっ!」



「ご、ごめんなさい…」






お皿がワイングラスにぶつかり、グラスが倒れてしまった。






「とんだ素人だな、あのウエイトレス…」




「比護さんに見惚れてたんじゃない?」








まあ、確かに彼カッコいいものね…。







とりあえず、飛鳥さんが来るまでゆっくりしてますか。

あら、この紅茶なかなか美味しい。









数十分後。





しばらくゆっくりしていたら、ウエイターさんが沖野さんたちのテーブルに近づいた。






「ん?なんだ?」




「どこかに行くみたいだね…」








奥の方へ向かう二人の背中を見つめる。





「あのアイドル女、くっつき過ぎなんじゃない?」




「サッカー野郎が歩くの遅いんだよ…」




『ま、まあまあ…』




「んじゃ、トイレで一服してくるか…」



「ちょっと…トイレも禁煙でしょ?普通…」



「でもさっきトイレに行ったとき…タバコの臭いがしたけどなぁ…」




「え?そうなの?」












きゃああああぁ!!!







「い、今のはヨーコちゃんの悲鳴!!」






そんな話をしていたら、悲鳴が聞こえてすぐに席を立った。








「今の2人、どこ行った!?」



「ち、地下の倉庫に…」



「まさかあのサッカー野郎…ヨーコちゃんにとんでもねぇことを…」






とんでもないことって…






小五郎さんを先頭に地下へあり、倉庫の扉を開けると、奥には真っ青な顔をして立っている沖野さん。




その近くに血の溜まりと…






「おい、飛鳥さん!?しっかりしろ!」









飛鳥悌耶さんの遺体があった。
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