Bullet of the promise

□第七一話
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「両親を殺害した…だと…」







カチッ、カチッ…と秒針が動く音が静かなリビング内に響きわたる。








「お前の両親は火事で亡くなったと…」




『赤井さんもご存じでしょ?彼らのやり方を…』







そう、彼らは証拠を残すような事をしない。





珍しく驚いた顔をする彼に私は正直に13年前の事を語った。










『13年前。パーティーを終え皆が帰宅しようとした時間、別荘内で大きな爆発音がなりました』









その時、別荘内をうろうろしていた私は、避難する人達に逆らって急いで部屋に戻った。



部屋にはパーティーを終え、着替えに戻った両親がいるからだ。






でも、部屋の扉を開けて目に入ったのは…











『お父…さん?お母さん…?』







ベットで血まみれになった両親の姿だった。





すぐに両親のそばに駆け寄ったが、もう息はなかった。


その時…









ザクッ…







『――ッ!!?』







背中に焼けるような痛みが走り、振り向くと…






全身黒で包まれ、面を付けた人物がいた。


服が黒で見えなかったが、付けた面には数的血が付いていた。





痛みに苦しみながらもすぐに分かった。











この人が両親を殺したのだ、と…









私を置いて去ろうとするその人の足を掴んで、止めた。




許せなかった。




何故、両親を殺害したのか問いたかった。



でも、痛みで口が上手く動かない。







その人はこう言った。










「憎いなら…悔しいなら…捕まえてみろ。

私を見つけることが出来るのであれば…な」







と。












それからやっと気持ちが落ち着いた半年後。






下校途中のことだった。








人通りの少ない狭い路地で微かに話声が聞こえた。




何かと思い、父に教わったように気配を消し静かに声のする方へ行った。







そこで聞こえた会話に私はFBIに入る事を決めた。









「そういや、アイツらはどうなったんスか?」





「アイツら?」




「ほら、やけに俺たちの事を嗅ぎまわっていた日本警察の夫婦とその娘ッスよ」




「ああ…ルシアンがやってくれたみたいだ。
初任務にしては上出来だったそうだ」




「バレてねー…ッスよね?

確か、夫の方は“ビユロウ”と繋がっていたと聞きましたが…」




「奴らが動いていないということはそうだろう。もし奴らが動いていたらルシアンも気づくだろう」




「そーッスね…」
















ルシアン…





それが、両親を殺したあの人の名前…











それが分かったらあとは簡単だった。



FBIに入るために必死に勉強して、高校卒業後アメリカの大学に通いながら、父と接触したFBIの人を捜した。





クレアさんと会ったのは、本当に偶然で、彼女が急に私に話しかけて来たのがきっかけだった。










「あなた…まさかユリナちゃん?」








父の瞳と母に似た顔立ちで分かった、と後に話してくれた。







それから、クレアさんにルシアンの事を話し、その人を追う為にFBIに入った。








「お前の両親は何故殺されたのだ?」





『クレアさんの話だと、両親は組織の事を探っていたそうです。何故調べていたかはわかりません。

資料などは全て両親の書斎にあったので…全部焼けてしまったのですが…』








両親が亡くなって、退院したらもうあるはずの家はなくなっていた。



家具も私物もアルバムも…全て…




当時、連続放火魔が逃走していて…

警察はその放火犯の仕業だとされていたから、丁度いい時期だったのだろう。










『なので、私は追います。彼ら組織を…ルシアンを…』








まっすぐ目の前の彼を見つめると…










『――ッ!!』








何故か抱きしめられた。











「……止めても無駄なのだろうな」




『…私が諦め悪い事ご存じでしょう?』








私の身体に回す腕の力が強くなった。



苦しいくらい、強く…









愛する人を失った悲しみを経験した彼はきっと恐れているのだろう。





誰かを失うことを…。







そんな彼に、私は大丈夫、と言うように彼の身体に腕を回すことしかできなかった。
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