カスミソウの君へ

□店員と小さくなった名探偵
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〜友梨奈 SIDE〜




バサッと広告チラシと一緒にポストに入っていた可愛らしい手紙。

今日は2通か…


蘭ちゃんの応援をすっぽかして解決した事件と一緒に大きく載っている新君の顔。

しっかりカメラ目線で決め顔を見せる従弟に、元女優の母と血のつながりを感じる。



数々の事件を解決して、高校生探偵とすっかり有名人になった彼宛てのファンレターが何度もこうしてポストの中に入っている。

一体どうして家を知っているのかしら?
若い子たちの情報網はすごいわね…






「おかえり、友梨奈姉」


『ただいま、新君。可愛らしいファンレターが来てたわよ』


「お、マジ!?」




書斎で大好きなミステリーに囲まれて過ごす新君にファンレターを渡す。
新君はというと、興味津々とファンレターを一通ずつ丁寧に開けては手紙を読んでほほう…と頬を緩めていた。


男の子だね…










今夜のオムライスは自信作!ふわふわ半熟玉子が上手にできました。





『そうだ、新君。明日はまちに待った蘭ちゃんとのデートでしょ?』


「別に、待ってねーよ…」


『トロピカルランドのアトラクションもバスの時間もしっかり調べていたでしょ?

パソコンの履歴に残ってたよ』



「なっ!?」





流行のスイーツを調べるためにネットを開いているとトロピカルランドの履歴が残っていたから、すぐに新君だと分かった。



一気にトマトのように真っ赤な顔をした従弟に微笑ましく思う。






『でも、新君。お金は大丈夫?蘭ちゃんから全部新君のおごりだって聞いたけど…』


「あ、ああ…まあ、なんとかなるさ!」





苦笑する新君に彼らしいな…と思った。
















翌朝。


しっかり準備をして家を出ようとした新君を引き止めた。



「?なんだ?」


『無駄遣いしないで、二人で仲良く使うのよ?蘭ちゃんには内緒ね』




と、わずかだけど、デート代が入った封筒を渡した。





「いいのか!?」


『遅くならないうちに帰ってくるのよ』


「ほーい。いってきまーす!」


『いってらっしゃーい!』





ご機嫌な様子で出かける新君を見送った。





まさか、そこでこの穏やかな日常が崩れてしまうとは知らずに。
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