カスミソウの君へ

□店員と洋服?
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それは突然のことだった。





いつものようにお店を閉め、いつものように帰り、いつものように夕食の後片づけをした。






さて、寝る前の紅茶を飲もう。

とウキウキした気持ちで今日は何にしようかコレクションの紅茶を眺めていた。






ピンポーンッ




と、インターホンが家中に響き渡る。
誰だろう…




扉を開けてみると、そこにいたのはお隣に住む博士だった。





『あら、阿笠博士。どうしました?』



「こんな時間にすまない、友梨奈君。ちょっと頼みたいことがあるのじゃが…」






何だか言いづらそうな表情をする博士。
どうしたのかしら?





「じ、実は…子供用の服を貸してはくれんかのぉ」


『子供用のお洋服ですか?それでしたら、新君の小さい頃のものがまだあったかと…』



「ああ、いや…男の子用ではなく……女の子用の服を…」



『女の子用の……』







・・・・・。








『…博士、女の子のお洋服を集めるご趣味に目覚めてしまったのですか…?』


「ち、違うわい!ちょっと事情があって…」


『事情?』


「そ、それはその…し、親戚の女の子が洋服を集めていてな。もし子供用服があるのであれば…」


『分かりました。私の幼い頃の物があるか探してみますね』


「ああ…すまんな…」







それまで博士にはリビングで待ってもらうことにした。





















『あった!やっぱりユキちゃん残してくれてた』





新君と同じところに仕舞っていた私の服を取り出し、博士のもとへ向かう。
ユキちゃんの管理が滞っていたから、見た感じ虫食いはなさそう。





『博士、ありましたよ。私の子供用ですので、その親戚の子にサイズが合うか、確かめてくださいね』


「ああ…すまないね、友梨奈君。助かったよ」



『いえいえ…』






よいしょ、と服の入った段ボールを持った博士は玄関へ進む。






『いらなくなった服がありましたら、また取りに行きますので、置いていてください』


「ああ、分かったよ。こんな時間にすまないな」


『お気になさらず。喜んで頂けると嬉しいです』






おやすみ、と最後に挨拶をかわして博士と別れた。




その数日後。懐かしい服を纏った少女に出会うことになった。
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