拝啓、愛しいあなたへ

□第1話
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〜リムルSIDE〜



よっす、俺リムル!
通り魔に刺されて死んで、スライムに転生した、元人間だよ!

転生先が異世界の洞窟で、その奥でヴェルドラ(ドラゴン)という名の盟友と出会った。
新たな人生…いや、スライム生は最初からインパクト大な出来事から始まってしまった。



洞窟を出た後もゴブリンと出会い、牙狼族と出会い、ドワーフ国へ行って…と、いろいろあったが、いつの間にか住人が増えたから村拡大のためにジュラの大森林内を移動することにした。



何日かかけて移動をして到着した新たな敷地。
ランガとミルドによって事前の測量と調査していたから、現時点での住人も満足に使える。


さて、日が暮れる前に飯の準備を始めて、明日から建物などの設立を開始しよう。

移動手段が歩きと牙狼族に乗るしかない。
魔物とはいえ、皆疲れているだろう。

俺の合図でテントを張る担当、焚火や食材調達担当などとそれぞれの仕事に入る。



さて、俺はどうするか…、と思ったところ食材調達組であるリグルたちが戻っていた。





「リムル様」


「どうした、リグル?何かあったのか?」


「いえ、少し行ったところに泉があるので、ご覧になったらどうかと」


「ああ…そういえば、ランガたちも言ってたな」


「はい。とても美しい泉ですので、夕食までのお時間にどうですか?」




キレイな水は、生活に必要になるから新天地を決めるときの必須条件だった。
ここは川もあるし、主な生活水はそこから使うつもりだ。
だが、気分転換の場所にするものいいだろう…

偵察がてらリグルに案内を頼み、その泉へ向かうことにした。





「しかし、この森に湧き水があったんだな」


「はい。以前の場所からは距離があったので我々はあまり近寄らなかったのですが、ジュラの大森林の中で一番大きい泉になるかと…」




そんなことを話している間に目的地が見えてきた。
「ちょっと」…どころか、今夜の拠点よりかなり離れていた。むしろ新天地に近いくらいだ。
一体どこまで食材調達に行くつもりだったんだ?
まあ、牙狼族の足があれば、これくらい大した距離ではないのだろう。





「おぉ…」





リグルの話通り、目の前に広がるのは美しい光景だった。
紫色の空と薄く浮き出る月が水面に映り広がって…前世の世界だったらSNSにあがるだろうな…


試しに泉の水に触れ、大賢者さんに鑑定してもらう。




〈解。魔素が含まれてますが、生活に支障はありません〉


(魔素?やっぱり魔物が住む森の泉だからか?)


〈否。自然にできたものではなく、所有者による魔素です〉




所有者って…



「なあ、この泉誰かの領地じゃないのか?」


「いえ、そのような話は聞いたことありません…この泉は確かに大きいですが、所有する魔物はいなかったかと…」






つまり…どっかの魔物が勝手に所有しているって話か?
そうなると、泉の水に関することはソイツと交渉する必要がある。
今後の事を考えていると、何かが視界の端に入った。

水のように透き通った花びら。
中央へ集まる色のグラデーション。
水面に浮かぶ存在。


(蓮…いや、睡蓮か…)


白の睡蓮が浮かんでいた。
キレイだな…と思っていたら顔を上げた先に他の色を見つけた。
それも、奥へ行くにつれ数が増えている。

導かれるかのように睡蓮を辿って行くと、花とは違う存在に気付いた。



息を呑む光景とは、このことを言うのだろう…




睡蓮が囲うように咲きほこり、その中央には、一人の少女が横になっていた。

水に溶けそうな長い髪、透き通った白い肌、少し幼さが残った整った顔立ち…
線の細い手足にあちこち浮かぶ赤い傷…






……傷!?ケガしてんじゃん!見惚れる場合じゃない!
ケガの様子から見て、まだ新しい。最近できた傷のようだ。




「おい!大丈夫か!?しっかりしろ!」


『ん……。』



俺の声に反応し、長いまつげがふるふると揺れた。
良かった。生きている。

うっすらと開いた瞼から小さな水が見えたかと思ったら…




『ハ…ロ…?』



と、呟いて再び瞼を降ろした。
はろってなんだ?ハローって言おうとしたのか?
いやいや、そんなコト今はどうでもいい。

すっかり見惚れていたリグルを叱咤し、ランガに乗せて拠点へ急いだ。
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