未来へ

□第一話
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3年月組。

姉であるあむと別れたあいは、自分の席に着くなり、読みかけの本を取り出した。

あむのクラス同様、教室では彼女たちの話が持ち切りだった。





「見た見た―カツアゲ撃退してるとこ!」



「やっぱり日奈森さん達ってすごいよねー」



「ふつうの子となんかキャラっちがうっていうか」



「うかつに近寄れない感じ」



「同じ制服なのに、日奈森さんが着ると、上品な感じで素敵だよね…」



「お母さん有名雑誌のライターなんだって、しかもお父さんは超有名カメラマン!」



「頭もよくて美人でミステリアス!」


「きっと彼氏は年上でー超セレブで…―」



『………。』





かってなウワサが流れるなか、それぞれは一体何を思うのだろうか



















〈あなたのうしろに守護霊がいます!!〉




「!!」

『………。』





その夜。日奈森家の夕食時につけられたテレビ番組に二人は顔を向けた。





〈人間はだれでも守護霊に護られているのです…〉



「なんだあ、またあのインチキおばさんか」



「あらっ霊感占いの冴木のぶ子先生はちがうのよ、あむちゃん。
ママの雑誌でももう三回も特集組んでてミセスに大好評」


「そんなことより見て見て、パパの力作ー運動会のあむちゃん大接写」


「パパ、のぶ子先生が見えない!」


「見て見て、あむー」



「……“ライター”に“カメラマン”ね…」



『(あながちウワサも間違ってはない…)』




あむたちの母みどりは月刊「主婦の知恵」編集者、父つむぐは野鳥カメラマン。あながち間違っていないが“超有名”とまではいかない両親である。
ウワサが大げさに広がったのだろう。




「こえー…オバケこえ〜〜〜」





そして、日奈森家末っ子、あみ(3歳)は隣に座るあむに抱き着いた。




「あのオバケたおしておねいちゃーん」


「あれは人間だって、あみ」


〈オバケ…?いいえ、守護霊はこわい存在ではありません。いつもうしろからあなたの本当の姿を見守っています
あなたを助けてくれる心強い味方です〉


「……やっぱこの人バカじゃん」


〈バカにしてる人は死にます〉


『………。』


「………なんか、あたしがいわれてるよーな…」











〈あなたにいってるんですよ〉










『………っ』



ガタッ


「あら、あむちゃん?もういいの?」




急に立ち上がったあむに視線が集まる。





「守護霊なんて結局ダメな人がさいごにすがるものじゃん。
あたしはそんなのゼーったいたよんない。

ごちそうさま」




それだけ言い残して部屋へ戻ってしまった。




「「か、かあっこいいー!!」」




両親のこころまで射止めたまま。


『ごちそうさまでした』



そんな中あいは一人、手を合わせたのだった。
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