未来へ
□第四話
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「うたた寝辺里くんかくしどり♡」
「!!」
『………。』
予想外なモノにガクッとコケるあい。
「なっ…なんでそーなるの!?」
「あらーあむちゃん辺里くんのこと好きでしょ?」
「なっなっなんでソレ…」
「告白してたじゃない。全校生徒の前で」
『そういえば…』
いろいろあり過ぎてすっかり忘れそうになっていたが…
たった数日前、全校生徒の前で公開告白し、さらにフラれているのだ。
〈そんなモノで釣られるのかな…〉
〈ねーいくら好きな人でも隠しどりした写真とかは…〉
〈さすがに…〉
「まだまだあるのよ。プライベートショット各種、㊙プロフィール。
ガーディアンに入ればもれなくもらえちゃうんだけど」
「あ、あう…」
〈あむちゃんつられちゃダメ!〉
〈人として!〉
『………。』
〈つられそうですわよ…〉
〈あむさん…〉
あいたちの期待もはずれ、特典(?)につられそうになっているあむの姿と止めようとする彼女のしゅごキャラたち。
「そっそうだ!買収なんてバカにしないでよ!」
〈そうだバカにすんなー!〉
〈つられかけてたくせに…〉
〈まっすぐな子ね〉
あむの態度にくすりと笑うなでしことてまり。
「じゃあココはかけひきナシにあむちゃんの恋、応援してあげちゃおうかしら」
「だっだからなんでそーなるのッ!?
だっだいたい…」
「彼…あした誕生日よ。恋は攻めが肝心!なにかプレゼントしてあげたら?」
どんどん怪しい方向にいくのを感じるあい。
「春休み中だからライバルもすくないはず。いまがチャンスよ、あむちゃん」
「そ…そんな…でもいきなり、好みとかわかんないし…」
〈つられてる、つられてる〉
『やっぱりこうなるんだ…』
〈あむさんって流されやすいんだね…〉
予感的中。
どんどんなでしこにつられていくあむを見て、将来悪いツボを買わされそうだと心配するあい。
「そーねえ…おかし作りなんてどう?」
「おかし―?ムリムリ、あたし家庭科サイアク苦手」
(え…?)
「だいじょうぶよ、教えてあげる」
「そ…それにオーブンとか道具とか…」
「それもまかせて♡いい場所があるのよ。
あ、あいちゃんも一緒にどうかしら?」
〈あ、いるの気づいていたんだ〉
『………。』
あまりにもどんどん進む話にすっかり自分の存在は忘れられているものだと思っていた。
『いえ…わたしは…(多分、あむさんが入ればわたしも引き入れるつもりなのね…)』
なでしこの作を予想したあいは、あむには悪いが断ろうとした。
〈〈〈〈行っきまーーす(ですわ)!!〉〉〉〉
『は?』〈え?〉
そう、断ろうとしたのだ。
バスケットにいたリズたちによって叶わなかった。
『ちょっと、勝手に…』
〈お菓子作り楽しそう!〉
〈今日のお茶会用のお菓子がありませんからねぇ〉
〈美味しいの、お願いね〜〉
〈このわたくしが満足するものでないと、ゆるしませんわよ〉
「きまりね!」
『………。』
完全に承諾してしまったなでしこに、もう訂正は聞かないとあいは諦めた。
「三十分後にここで待ち合わせね」
「ちょっちょっ」
「カバン置いて着替えていらっしゃい」
そう言って、なでしこは帰ってしまった。
「………(王子にプレゼント…友だちと約束…なんかちょっとだけ…)」
〈たのしみ?〉
「べっべっつにーめんどくさいし」
『……それじゃあ、急ぎましょう』
「そうだね。」
そんな会話を聞いていた人がいたなんて気づきもせず、あいたちも一旦家に帰った。
(料理、苦手だったんだ…)
あむの後ろを歩きながら、あいはぽつりと心の中でつぶやいた。