HQ夢小説 宮治

□一話.
2ページ/2ページ





「あ、そうや。ツム、俺のベスト返せ」





昼休み、屋上で弁当を食べ終わったバレー部の1年生組。
同じ部活に入り、意気投合したようで、こうして一緒にお昼を食べる仲となったのだ。

後片付けをしている時、思い出したように口を開いたのは、この稲荷崎高校ではさっそく有名人となっている、宮兄弟の一人、宮治だ。




「ん?ベスト?」



「今、お前が着とるやつ。今日は持ってくんの忘れよったやん」





ストローを咥えきょとんとする片割れに呆れながら返却を求める。
当の本人は、「せやった」と特に詫びる様子もなく、ほれ、とブレザーの下に着ていた紺のベストを手渡す。


受け取ったソレを纏うと、冷房のおかげで4時間目の授業中に冷えてしまった身体に少しだけ暖を感じる。


じわじわと暖かくなるのに満足する治は持っていたパックのストローに口をつけて中身を飲む。






「あーーー!!!」





ぶっ!!




が、急に大声を出した侑によって噴き出すこととなった。





「何や、急に大声出して」



「次の英語ん宿題、忘れた!角名、教室で見して!」



「え〜…」




バタバタと教室に戻る準備を始める侑に、他の3人も荷物を纏める。


喧しい奴っちゃな。とため息を吐く治に食い掛る侑。
二人の言い合いやケンカに慣れた銀島たちは“また始まった”とこちらもため息をこぼす。




1年のクラスがある階に着いた時のことだった。

雑談をしながら教室近くの踊り場へ足を付けた時、ドンッと治の身体が何かとぶつかった





「!!」


『!!』




小さく聞こえた声は女子生徒だった。
180p超えの男にぶつかった身体は後ろへ傾く。

だが、その後ろは階段。

「やばっ!」と危機を感じた治は持ち前の反射神経で彼女の手を掴み、引いた。

勢いよく自分の胸に寄せた重みがあまりにも軽く、片足を一歩後ろに引いただけで耐えれた。




「治、大丈夫か!?」


「おん。」



安堵の息を吐いた治は引き寄せた人物を覗き見る。
未だに固まったまま動かない女子生徒。



不思議に思い、顔を隠す艶のある前髪をサラリ、と退かした。


ぎゅっと両目を瞑っていた。





「大丈夫か?」


『……あれ?』



思ったより衝撃が来なかったのに不思議と思ったのか、ゆっくり目を開けると顔を上げた。



しっかり目と合ったその顔を見た途端、今度は治が固まった。


反対に、少女はきょろきょろと視線を様々なところに移すと漸く状況が分かったのか、ハッと我に返った。



『す、すみません』


「お、おん」



サッと治から距離を取る彼女に治も我に返った。




落ちていた私物を拾うと、彼女は謝罪と一緒に一度頭を下げ、その場を去った。





「今の、八戸さんじゃない?」


「八戸さんって誰?」


「…侑って俺と同じクラスだよね?」


「?じゃあ、アイツも同じクラスなん?」


「そう」


「あんな奴、居ったか?」


「おいおい…角名は仲ええのか?」


「いや。係は一緒だけど、話したことあんまない」


「ふーん…」




そんな彼らの会話を耳に入れながら…






「(八戸さん…)」




治は一人、見えなくなった背中の行き先を見つめていた。
次の章へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ