夜久トキドキ雨

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プロローグ NEW!
"小さいね"




俺が一番嫌いなコトバーーー……

コンプレックスの低身長。


どうしても、周りと比べて明らかに浮いてしまう。


でも……
そんな事よりももっと嫌なのはキミよりも小さい事。

この身長差って…どうやって埋めていいんだろうね。



____今日もシトシト雨が降り続ける。





*.。*.。*.。


◯柿崎涼香(カキザキ リョウカ)
・音駒2年生
・身長168cm(重要)

◯夜久衛輔
・ほぼ原作通り

◯相原愛菜(アイハラ マナ)
・ 涼香と同じクラスの親友

1.期待を胸に NEW!
「おはよー」

朝、布団から出て居間に入ると、こんがりと焼きあがったトーストのいい匂いが広がっていた。



「おはよう」

俺の弁当を作っている途中の母と新聞に目を落としていた父はにっこりと笑いながら言った。



寝ぼけたまま顔を洗い、そのまま食卓についた。テーブルにはいつも通りトーストとサラダ、牛乳、バターが置いてある。

眠そうだな、と父さんが顔を上げて言った。



「うん…。昨日の夜勉強してたらいつの間にか2時過ぎててさ」

きつね色のトーストにバターを塗りながらそう答えた。



それにしても昨日は夜更かしし過ぎたなぁ……。今日の授業寝そうかも。ぽかぽかとした陽気が余計に眠気を誘う。

俺は大きなあくびをした。



「えらいわねー…。そういえば今日から衛輔も3年生なんだものね。」



もう3年かぁ。あと1年で高校も卒業なんだな。受験があると思うと気が重い。いや、その前に部活だ。今年こそマネージャーを……!




「衛輔」

「んー?」

「今日雨らしいから傘持ちなさい」

「あ、雨っ!?」




俺が急に立ち上がったので二人は驚いた顔をした。


「ごちそうさまっ!」







朝ごはんを残し、急いで歯を磨く。




「なんでそんなに急いでるの?」

「よ、用事あったの」






二人は首をかしげるが、適当にごまかして俺は急いで家を出た。


「いってきまーすっ!!」








腕時計を見ると7時09分。

ヤバイ…!あと4分しかねぇ…





俺は猛ダッシュで駅に向かった。

……ある期待を胸に抱いて。

2.息が止まってしまうような NEW!
俺は汗だくになりながらやっと駅に到着した。

時計を見ると7時12分。良かった、ギリセーフ……。





『間もなく、7時13分発、普通列車が到着いたします』

ホームにアナウンスが流れる。

額に流れる汗を腕で拭い、俺は急いで3車両目が来る場所に向かった。




*.。*.。*.。




ガタンゴトンガタンゴトンと一定のテンポで車両が揺れる。




『次はY駅、Y駅に到着します』




アナウンスで俺の心は浮き立った。

キキーッと急ブレーキの音が鳴り、やっと電車は止まる。ドアが開き、どっと人が流れ込んできた。


その人混みの中に黒髪の長身の女の子を見つけた。

……思わず息が止まる。





____あの子だ。

いつもその子は本を読んで通学時間を過ごす。どんな本を読んでいるのかは知らないけれど。


俺は片手に持っていた英単語帳を鞄にしまった。
もう、読んでたって頭に入らない。


俺は彼女に気づかれないように盗み見た。髪を耳にかける仕草を目の当たりにし、心臓がギュっと痛くなる。

……やべ。可愛い…。





『次はN駅、N駅に到着します。』

俺は降りる準備をする。




「すみません、降ります」


人混みをかき分けて急いで外に出た。


……彼女を見失わないように。

3.名も知らぬあの子 NEW!
俺は彼女の名前も学年も知らない。

…知ってるのは俺と同じ音駒高校の生徒だという事だけ。制服を見て音駒だと分かったが、学校の中で彼女を見かけた事はまだ一度もない。


彼女と出会えるのは雨の日の7時13分の電車だけだった。




「夜久〜おはよ」



後ろからポンと肩をたたかれて後ろを振り返ると……


「おお、おはよ」


同じバレー部の海だった。



*.。*.。*.。



「そんでさー、俺ん家の犬がさ…」

「うん」




俺はひたすら相槌を打つ。

彼女を目で追いながら会話を楽しむなんてそんな器用な事は俺にはできなかった。



2、3メートル先の彼女が赤信号で止まると、くるりくるりと彼女のピンク色の傘が楽しげに回った。

憂鬱な暗い雨空を吹き飛ばしてくれるようにピンク色が回る。


これ見るの好きなんだよなぁ…。




彼女の外見はは可愛いというよりは美人と言った方が似合う。

サラサラと揺れる黒髪に涼しげな目元。

一見冷たい美人という感じなのにピンクの傘をくるくるまわす姿はなんだか可愛かった。




「もうダメだ…」

「ん?何が?」

「…可愛い」

「えっ…俺そんな可愛い…?」

「お前じゃない」




あの子を見かけた日はいつも幸せな気持ちになれるんだ。



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