★×芥川慈郎★
□貴方のために
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ジローは跡部のことが大好きだ。
いつもどうやったら跡部が喜んでくれるか、そればかりを考えている。
跡部はすごく優しいから。
その優しさに応えたくて、ジローは一生懸命自分に出来ることを考えた。
跡部にバレないように、たくさんの人に相談したり、色々試してみたり。
跡部のためなら、と。
□■貴方のために□■
「ジロー?何処だ?」
跡部が用事を済ませて家に帰ると、ジローの姿が見当たらない。
いつもは跡部が帰ると、ジローは走って玄関まで迎えに来るのに。
跡部はジローを探して歩き回った。
ジローは電気の点いていない寝室のベッドの上で、布団に包まっていた。
「ジロー?」
「…っく、…ぅ、ひっ…」
耳を澄ますと、ジローの声が聞こえる。
どうやらジローは泣いているようだ。
「ジロー、どうした?」
「…ぅえ、…ひっく…、跡部、…っ…」
電気を点けて、ベッドに近づく。
ジローはクッションを抱えて泣いていた。
顔もクッションも涙でぐしょぐしょで、長い間泣いていたことが判る。
「何だよ、どうしたんだよ?」
「跡部、ごめ…っ、…く、ごめんなさ…っ」
ジローは泣きながらひたすら謝っている。