★×芥川慈郎★
□信じるために
3ページ/4ページ
「……ん…」
あまい、におい。
あまいにおいがする。
「アトベ…?」
ジローの手は、縛られていて、ベッドに固定されている。
「ア…トベ…このにおい、きもちわるいよ…」
ジローの顔色は目に見えて悪く、目からは涙が零れていた。
「気持ち悪い?そうか」
跡部はジローを一瞥した。
「すぐにそんなこと言えなくなるけどな」
跡部はジローの後孔に指を突き入れた。
「ひやあぁっ!!」
瞬間、ジローの体が大きく跳ねた。跡部は妖笑して、指を引き抜いた。
「なあジロー、この匂いはな、さくらんぼのお香を焚いてるんだ」
跡部はさくらんぼが山積みにされた皿を取った。
「……?」
「美味そうだろ?ジローにも喰わせてやるよ」
ジローは慌てて首を横に振った。しかし跡部は構わずにさくらんぼをジローの後孔に挿れた。
「…くふ…っ、やめ…」
ジローの後孔はひくひくと収縮を繰り返している。
「美味そうに喰うじゃねぇか。美味いだろ?」
跡部は次々とさくらんぼを挿れていく。
「ぃやあぁ…ふっ、ぅ…もう、そんなに…挿れな…で…も、無理…」
「また余裕じゃねぇか」
皿に盛ってあったさくらんぼはジローの後孔に呑み込まれ、もうほとんど残っていない。
「…はぁ…ふ、ぅ…ん…ぃゃぁ…は、ふ…」
新しくさくらんぼを挿れる度に、それまでに挿れられていたさくらんぼが奥へと押し込まれていく。奥の方はもう痛いくらい圧迫されて、しかしそれもまた、言いようのない快感を与えていた。
「く…あ、あぁぁ…跡部…っ、やめ…」
「何だって?」
「跡部…っ…何で…こんなこと…する、の?オレは、ずっと跡部…が、好きな…のにっ…」
「好き?オレのことが?寝ぼけてんじゃねぇぞ?お前は好きじゃないやつらに抱かれて喘ぐ淫乱なんだな?誰でもいいんだろ?」
「ち…違う、跡部…」
「?何がだ?」
跡部はジローの顔が真剣だったので、取り敢えず話を聞いてみることにした。
「跡部…違うの、オレ、他の人に抱かれたことない…から、こういうことするのは、跡部だけだから…」
ジローは泣いていた。
「跡部だけが…大好きで、みんなには、何もされてなくて…全部、跡部が好きだからって、何とか…凌いできてて、
跡部が、誤解してるみたいだから…ってみんなに相談したの…そしたら、意外と時間がかかって、徹夜になっちゃって、跡部に、連絡する時間、なくて…」
「…………」
「跡部に、悪いことしちゃった…って、思って…謝らなきゃ、って、思ったんだけど、
考えすぎて、熱出ちゃって…」
ジローは小さく笑った。
「ごめんね…オレがまぎらわしいことしたから、跡部に…迷惑、かけちゃったし…」
「ジロー…嘘じゃないだろうな?」
「…嘘なんかじゃない」
「…そうか…」
跡部はジローをきつく抱きしめた。それは苦しいほどに。
「跡部…?」
「…悪いジロー…こんな嫌な思いさせて…」
ジローはその一言で理解した。
自分は苦しいほどに、それに溺れるほどに愛されているのだということを。
「ううん…跡部、大好きだよ…?」
「ああ…俺もだ」
随分遠回りした。
この想いに気付くまでに。
だから、今まで信じられなかった分、大切にしたい。自らの身体で快感を受けとめながら、ジローは、心から、願うように、祈るように、そう、思った。
FIN