★×芥川慈郎★

□信じるために
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「……ん…」

あまい、におい。
あまいにおいがする。

「アトベ…?」

ジローの手は、縛られていて、ベッドに固定されている。

「ア…トベ…このにおい、きもちわるいよ…」

ジローの顔色は目に見えて悪く、目からは涙が零れていた。

「気持ち悪い?そうか」

跡部はジローを一瞥した。

「すぐにそんなこと言えなくなるけどな」

跡部はジローの後孔に指を突き入れた。

「ひやあぁっ!!」

瞬間、ジローの体が大きく跳ねた。跡部は妖笑して、指を引き抜いた。

「なあジロー、この匂いはな、さくらんぼのお香を焚いてるんだ」

跡部はさくらんぼが山積みにされた皿を取った。

「……?」

「美味そうだろ?ジローにも喰わせてやるよ」

ジローは慌てて首を横に振った。しかし跡部は構わずにさくらんぼをジローの後孔に挿れた。

「…くふ…っ、やめ…」

ジローの後孔はひくひくと収縮を繰り返している。

「美味そうに喰うじゃねぇか。美味いだろ?」

跡部は次々とさくらんぼを挿れていく。

「ぃやあぁ…ふっ、ぅ…もう、そんなに…挿れな…で…も、無理…」

「また余裕じゃねぇか」

皿に盛ってあったさくらんぼはジローの後孔に呑み込まれ、もうほとんど残っていない。

「…はぁ…ふ、ぅ…ん…ぃゃぁ…は、ふ…」

新しくさくらんぼを挿れる度に、それまでに挿れられていたさくらんぼが奥へと押し込まれていく。奥の方はもう痛いくらい圧迫されて、しかしそれもまた、言いようのない快感を与えていた。

「く…あ、あぁぁ…跡部…っ、やめ…」

「何だって?」

「跡部…っ…何で…こんなこと…する、の?オレは、ずっと跡部…が、好きな…のにっ…」

「好き?オレのことが?寝ぼけてんじゃねぇぞ?お前は好きじゃないやつらに抱かれて喘ぐ淫乱なんだな?誰でもいいんだろ?」

「ち…違う、跡部…」

「?何がだ?」

跡部はジローの顔が真剣だったので、取り敢えず話を聞いてみることにした。

「跡部…違うの、オレ、他の人に抱かれたことない…から、こういうことするのは、跡部だけだから…」

ジローは泣いていた。

「跡部だけが…大好きで、みんなには、何もされてなくて…全部、跡部が好きだからって、何とか…凌いできてて、
跡部が、誤解してるみたいだから…ってみんなに相談したの…そしたら、意外と時間がかかって、徹夜になっちゃって、跡部に、連絡する時間、なくて…」

「…………」

「跡部に、悪いことしちゃった…って、思って…謝らなきゃ、って、思ったんだけど、
考えすぎて、熱出ちゃって…」

ジローは小さく笑った。

「ごめんね…オレがまぎらわしいことしたから、跡部に…迷惑、かけちゃったし…」

「ジロー…嘘じゃないだろうな?」

「…嘘なんかじゃない」

「…そうか…」

跡部はジローをきつく抱きしめた。それは苦しいほどに。

「跡部…?」

「…悪いジロー…こんな嫌な思いさせて…」

ジローはその一言で理解した。
自分は苦しいほどに、それに溺れるほどに愛されているのだということを。

「ううん…跡部、大好きだよ…?」

「ああ…俺もだ」

随分遠回りした。
この想いに気付くまでに。


だから、今まで信じられなかった分、大切にしたい。自らの身体で快感を受けとめながら、ジローは、心から、願うように、祈るように、そう、思った。



FIN
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