★×跡部景吾★
□俺の玩具
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□■俺の玩具□■
あれは…確か俺が氷帝に転校してきたばかりの頃。
テニス部顧問の榊太郎(43)にエリートとして買われてきた俺は、転校してすぐテニス部に入部した。
初日は顔合わせだけ。
氷帝は確かにレベル高い方だとは思ったけど、はっきり言って自分の方が上やと思った。
…跡部に逢うまでは。
その日跡部は生徒会で遅れて来た。
俺は部活の後、榊に色々話を聞いとって遅なってまったから急いで帰ろう思て、テニスコートを横切ろうとしたんや。そしたらコートからボールを打つ音が聞こえて、見てみると、そこには…。
俺の総てを超えるようなテニスをしとる奴がおった。きっと俺なんかじゃ一生敵わへん…そう思った。
暫くそれに目を奪われ、立ちすくんどった。
すると、跡部は俺に気付いたのか、怪訝そうな表情でこっちを見た。
「アーン?誰だてめぇ」
口が悪い、せやけどえらい綺麗な顔やった。
「あ…俺は今日からテニス部に入った忍足侑士や。よろしゅう」
「ああ…てめぇか、榊の言ってたエリートっていうのは…。俺は跡部景吾。テニス部の部長だ」
跡部は大して興味なさそうに言って、再びボールを打ち始めた。
もう8時を過ぎとった。
「…こんなに遅なって…親御さん心配せぇへん?」
跡部は一瞬ぴくりと反応したが、視線を上げることすらしないで言った。
「親なんて家にいねぇからいいんだよ」
それを聞いた時、跡部は淋しがっているような気がした。
「それより、お前こそ遅くなって大丈夫なのかよ」
「あ、ああ。俺、一人暮らしなんよ。いきなりやったから、一人で来たんや」
「ふぅん…。ちょうどよかった。暇なら相手しろよ。ラケットなら俺の貸してやるから」
そして、そこで、今までテニスをやってきて初めて、自信を揺るがされるほどのショックを受けた。
ここまで差があるものなのか。
自分の思うようにできない歯痒さを感じた。
「あー…あかん。お前強すぎるわ…」
「当たり前だろ。…まぁお前もなかなかだったぜ」
その時、跡部は初めて俺に向かって微笑んでくれた。それはとても美しく、俺の理性を崩すのに充分すぎるほどだった。