★×跡部景吾★
□あなたが…スキ
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「判んねぇよ」
冷たい雨。
「信じられるかよ」
冷たい身体。
「愛って何だよ」
冷たい言葉。
「恋なんて知らねぇ」
冷たい態度。
「もう近寄るな」
冷たい気持ち。
降り続く雨の中、走り去る跡部と立ち尽くす忍足。
二人の間を冷たい雨が流れていた…。
□■あなたが…スキ□■
忍足が跡部に告白したのはつい先日のこと。
普段は自分の本心を決して見せない忍足が、初めて跡部に正直な感情を見せた瞬間でもあった。
その時の跡部の答えは、やけにあっさりしていて、こういうことに慣れきっているようだった。
「いいぜ。じゃあ今日家に来いよ」
「………は?」
「だから、俺とヤりたいんだろ?SEX。だったら家来るよな?」
「っ!ふざけんなや!」
「何だよ?その為に俺に告白したんだろ?」
「違う!そんなんと違うんや!!」
「…意味判んねぇ」
跡部は溜め息をついて、さっさと出ていった。
「そんなんや…ない…」
忍足はその場にしゃがみ込んで呟いた。
それから何日か経って。
二人は初めて一緒に帰ることになった。
その道の途中の公園で、忍足は跡部に聞いた。
「なぁ…何であんなこと言ったん?」
「俺を抱こうとするやつは数え切れないほどいたからな。お前みたいに告白してくるやつも、強姦してくるやつも、痴漢も。
初めは嫌だった。だけど今はもうどうでもいい。どうせ一度ヤらせれば満足するやつらばっかりだからな。お前もそうなんだろ?」
淡々と、感情を込めずに語る跡部。
「違う!」
ポツ…
雨が降ってきた。
「俺はそんなんと違う!ただ欲望に任せて襲うようなやつやない!」
「じゃあ何なんだよ!男が男に告白する理由なんて、他に何があるって言うんだよ!」
跡部が感情的に叫ぶ。
雨足が強くなった。
「どんなきれいごとで飾ったとしても、行き着く所はみんな一緒なんだよ」
「跡部は愛されたことがないから怖いんとちゃうん?自分で判らへんことから逃げとるだけやないか!」
「っ貴様ぁっ!」
「なぁ俺がそんなやつらと違うってこと判らへんの?俺のこと信じてはくれへんの?愛とか恋とか、欲望以外に何かあるって思わへんのか?」
「判らねぇよ」
雨が激しさを増し、ザァザァと音を立てる。
「信じられるかよ。……愛って何だよ。恋なんて知らねぇ」
俯き、言葉を震わせながら言う跡部。
今にもその声が、その存在が消えてしまいそうなほど儚い。
「もう近寄るな」
跡部はそれだけを搾り出すように言うと、忍足に背を向けて立ち去った。
「跡部……畜生何でや!何で判らへんのや!!」