★×跡部景吾★

□二人で、ね
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□■二人で、ね□■


金曜日。
いつものように学校が終わって、忍足はいつものように電車に乗る。
いつものことだが、金曜日ということもあって、車内は非常に混んでいた。
鮨詰め状態、とでも言うのだろうか。
忍足は何とか隙間に入り込み、溜息を一つついた。
忍足は結構背が高い。
そのせいで、周りの人の様子がよく見える。
何の気なしに車内を見渡してみると、忍足がいるのと反対側のドアの辺りに、見覚えのある制服。
それは今自分が着ているのと同じ氷帝学園の制服。
さらによく見ると、見たことのある顔だ。
それは、誰もが知る、生徒会長兼男子テニス部部長の跡部景吾だった。

(へえ、珍しいなぁ、跡部が電車乗るなんて)

何となく興味を覚えた忍足は、人の隙間を縫って、跡部に近付いた。
そこで、跡部の様子がおかしいことに気がついた。
顔が異常に赤い。
気になった忍足はさらに近付いてみた。
跡部の息は荒く、全身に珠のような汗をかいていて、瞳は潤んでいた。

(なんや?具合でも悪いんか?)

もっと近付いてみようとしたちょうどその時、電車が大きく揺れた。
その時、見てしまった。
跡部のズボンの中に手を突っ込んでいる男の姿を。
その男の手中で堅くなっている跡部自身を。
そう、跡部は痴漢の被害に逢っていた。

(え…?まさか、そんな…ってアカン!)

忍足は慌てて人を掻き分けて跡部に近付いた。

「オッサン、人の連れに何しとんねん」

忍足は痴漢の腕を掴んだ。

「な……っ!」

痴漢は人込みの中に逃げ込んでしまった。

「ちっ…」

忍足は悔しそうに舌打ちをしてその後を追おうとしたが、跡部が忍足を引き止めた。

「…おし…た…り」

「跡部…?」
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