きみ

□幸福者
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唇を重ねたら、
心臓がきしりと痛んだ。



大好きで大好きで、僕のことも好きだと言ってくれたカヲルくん。本当に嬉しかった。

出逢ったときから、他の人とは違うものを感じていた。運命、とでも言うのかな。そうだ。きっと僕らは出逢う運命だったんだよ、カヲルくん。

白い肌に紅い瞳。兎みたいなカヲルくん。その容姿の上に博識なんて、文句のつけようがない。そんな人に、好きだと言って貰えた僕はこれ以上ない幸福者。

ずっと続くと思ったんだ。
君に逢ってから世界が一変していって。
ずっと笑い合えると思ったんだ。
いつかは父さんもこっちを振り向いてくれるんじゃないか、とか、淡い希望も抱きながら。

なのにたった1日足らずで、カヲルくんは逝ってしまった。それも、僕のせいで。

僕が殺した。
僕が殺した。
僕が殺した。殺した。殺した。殺した!

だって仕方がないじゃないか。カヲルくんは僕の心を裏切ったんだ。

カヲルくんが裏切り者だから、だから僕が殺したんだ!


・・・本当に?
本当にそうだった?

今でも掌に残る感覚。カヲルくんの息の根を止めた感覚。綺麗な綺麗な紅い瞳。もう僕に笑いかけてはくれない。
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