きみ
□軽やかに侵食
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「ありがとう」
言って、余りにも綺麗に微笑むから、呼吸を忘れる。
「君が、悪いんだ」
君の笑顔が僕をおかしくする。
「いいよ、カヲル君。君になら、いいんだ」
細い指が頬まで延びてきて僕の髪をそっと撫でた。慌てて元に戻す姿さえ、いとしい。
するとシンジ君が不意に一歩後ずさる。
「ご、ごめんっ・・・、いきなり変なこと、言った」
「変なこと?」
「君になら殺されたいって言った」
「あぁ、そのことかい?全然変なことなんかじゃないよ。僕も同じさ」
震える唇に人差し指をあてて、これ以上は紡錘がせないようにした。すると、少し眉をひそめられる。
「ずるいよ」
ずるい・・・?
別に意地悪をしている訳でもないのに。
「ずるい・・・っ」
嗚咽を噛み締めるように下を向くシンジ君。さしずめ、泣いてしまう一歩手前なのだろう。