王子
□言葉の、奥の。
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桜はいつの間にか散って、気温も上昇してきた。麗らかな春の陽気から、強い陽射しの夏に変わる。
けれど真選組には季節なんざ関係なく仕事が積もっている。
今も俺は始末書の山に追われているところだ。
しかし一つ納得出来ないことがあるんだが・・・。
なぜ始末書を書く羽目になった当人がスヤスヤと寝息を立て眠りこけているのだろうか。
・・・おかしくない?何コレイジメ?
「おい、起きろ!」
「んー」
「起きろっつってんだろうがァァァ!!」
「煩ぇな土方コノヤロー。人の安眠を奪うたァどういう了見でィ」
「んじゃあ仕事中に惰眠を貪るテメェはどういう了見なんだ?あ?」
些細な言動でも人を苛つかせる、ある意味才能を持った部下を睨み付ける。
他の隊士共なら逃げ出すような鋭さなのに、何分コイツとは昔から一緒に居るせいからか何なのかこの攻撃(?)が効かない。
それどころか「アイス奢れよ」なんて、人にたかってくる始末。手に負えない。
余計苛々して煙草を取ろうと手を伸ばす、が、その腕を総悟によって掴まれた。
「・・・何しやがる」
「煙草、やめなせぇ」
「躰に悪い」だの「臭い」だの言って掴む力をより強くする。
「これがねぇともっと悪くなんだよ」
「やめろって言ってんだ」
なぜかいつもより真摯な瞳で見つめられる。距離が思ったより近く、端正な顔に魅入ってしまった。
「ジロジロ見てんな。拝観料取られてぇんですかィ」
綺麗な顔からは想像も付かない毒舌に一瞬怯みつつ、無視するように手を払い除けて煙草に火を点けた。
「アホ土方・・・」
「んだと・・・ッ!」
反発する前に栗毛は部屋から出ていってしまった。
「意味判んねぇ、総悟のヤロウ」