王子
□おちつくのは、
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黒い髪が嫌いだった。
切れ長の瞳が嫌いだった。
何よりも、俺の欲しいものを持っていたことが嫌いだった。
俺の両の目が映す、ひと。
昔は相当馬鹿みたく喧嘩を繰り返してきたらしいが、今ではもう真選組副長という地位を得、数え切れない人々を実質統帥しているといえる。
彼の仕事にはニコチンがつきもので、躰にもその香りが付き纏っている。
後ろからゆっくりと近づき、見つめてみる。
俺の存在に気が付いたらしい土方コノヤローは、こちらへとゆっくり手を伸ばす。
「・・・どうした?」
至極優しい声。
優しい瞳。
仕事でいつもは血を浴びるくせに、そんな表情をされたら、もうどうすればいいのか判らなくなる。
「なんでもねぇですよ」
「嘘だろ」
「嘘じゃねぇよ」
「目で訴えてんの、判る」
どうしてそんな些細なことに気が付くのだろう。
「・・・おかしな人でさァ」