王子
□空を、僕を、思う
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降りしきる雨。
血生臭い香り。
そして、アンタの匂い。
先程まで昂っていた感情が、やけに落ち着く。安心する。あぁ、まだ俺は俺だ。何者にも支配されていない。そう思える。
土方さんが居るから、俺ァ俺で居られるみてぇです。多少悔しいけれど。
アンタが居ないと、世界が欠ける。
土方十四郎は、誰からも何故か好かれる人間だった。無論、近藤さんや、姉上からも。
幼い俺はそれが悔しくて悔しくて悔しくて仕方がなくて、何でアイツだけが、そう常日頃感じていた。
劣等感。
だって、あの人たちが俺を見てくれないんだもの。
真選組が立ち上がって、「副長」になってからも、部下たちから慕われている様子だった。俺とは違う。
俺は同じ隊の奴らにも恐れられていた。
「化け物」と言われているのも重々承知の上。それでも斬らなきゃならないんだ。だって、強くない僕には
「何の意味も、ない」
「は?」
「いぇ」