鬼灯様

□獄卒の日々
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新たに獄卒に就職したゆかりは鬼灯様の元で研修していた。
初めてのことばかりで見るもの全てが新鮮だった。
そんなをゆかり他所に鬼灯様は淡々と仕事の内容を説明し、現地へ視察しに行くことを伝えた。

「以上で内容の説明は終わります。で、これから現地へ視察しに行きますが、何かご質問は有りませんか?」
と巻物整理しながら話した。

「そうですね…現地へ行くのはいいのですが、この格好でよろしいのでしょうか?」
確かに考えてみればゆかりも鬼神。それも黒褐色二本角。
獄卒の中では極めて珍しく、殆どが白か、白でも線が入っているのだった。
その話はさて置き、出かける姿に悩んでいたゆかりに鬼灯様は、ふむと首を傾げた。

「では、私のニット帽お貸ししましょうか?」
「いいんですか?これで角隠せますね!」
子供みたいに素直に喜ぶゆかりを見て、鬼灯様も自然と笑顔になった。

準備を済ませた二人は、現世の入り口へと歩んでいった。
通路に入れば無数の目玉が二人を見つめる。
「なんか不気味です…」
先ほどの元気とは裏腹に、目玉の恐怖に鬼灯様の着物の裾をギュッと掴んだ。
「あぁ、伝え忘れてましたね。あの目玉は監視用です。亡者が逃げ出していないか…と言っても門番がいるので別に問題はないのですがね」
「門番?」
「えぇ、牛頭と馬頭です。ほら、あそこに…」と指差した。
そこにはガッツリ化粧した獄卒獣が二匹…いや二人いた。
「あら、鬼灯様。これから視察ですか?」と話しかけてきたのは馬頭。
「はい。新人を連れて…」

ずっとしがみ付いているゆかりは、大きな巨人が襲うと勘違いし余計にしがみつき、後ろに隠れてしまった。
「ゆかりさん。ご安心なさい。馬頭は貴女を襲う猛獣ではありませんよ。あのじじぃと違って」
眉間に皺を寄せて小さく舌打ちをした。

(じじぃって誰にことだろう。…ただ一つ言えることなら、その"じじぃ"って人は鬼灯様に相当煙たがられてるみたいだから、下手にその話をするのはやめよう。)
そう心に決めた。

二人は馬頭を後にし、現世へと足を踏み入れた。
門を潜ればそこは東京。人が密集する地。
何もかもが初めてのゆかりにとって東京はレベルが高かったかもしれない。

人ごみに紛れながら鬼灯様の後ろを只管付いて行くゆかり。
着いたのはある動物園だった。
「鬼灯様、今回の視察は動物園?」
「えぇ、ここで動物を観察します」
目が輝いてる…。鬼灯様の目がすっごく輝いてますよ⁉︎
手にはカメラを持っている。

これって完全にサボりですよね鬼灯様!と思った。
「仕事の合間に行くのも悪くないでしょう。##NEME1##さん」
「はい。ですが…」
「何かご不満でも」
「いえ…鬼灯様ってエスパーですか?」
「はい?」
違った返事に鬼灯様は驚きを隠せなかった。
「そんなこt「だって私の思ってることと似た事仰るんですもの」…………あぁ、そういう事ですか」
「顔に出てるんですよ。解りやすい」
クスッと笑った鬼灯様を見て、顔を真っ赤にした自分が恥ずかしくなりより深くニット帽を被った。

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